ペダリングの左右バランスは均等であることが望ましいのか?

ペダリングの左右バランスが均等でないと速くなれませんか?と聞かれることがあります。結論から言えば、左右のパワーバランスが均等であると良いですが、左右均等だからと言ってパフォーマンス向上に関与しているかどうかは明確ではありません

ロードバイクのペダリングと必要な筋トレ

実際、ロードレースやトライアスロンのプロ選手を始め、様々な大会で結果を残している選手たちのパワーデータを観てみると、右52% : 左48% など出力の割合は左右で異なりますし、基本的に左右で ±2-3% 程度の差がある人の方が多いです。

 

これは他の競技にも言えることですが、水泳の自由形(クロール)を思い出してみましょう。

 

息継ぎ動作の時間を含めれば多少左右差を感じますが、息継ぎをしていないタイミングでも左右で水をかき分ける秒数がそれぞれ異なります。しかし、左右均等に、右50% : 左50% でクロールを行なっている選手が勝つのかと言えば、そうではないことも多いです。

 

上記のように、自転車以外の他種目を考えても、左右非対称で同一動作を繰り返す種目(ランニング/水泳など) において、パフォーマンス向上を目指すためのアプローチに左右差をなくすという選択は、何もない限りはあまり重要視しません

 

と、ここまで話をすると “左右対象でなくてもいいんだ” と思われると思いますが、少し極端な例を出してみましょう。

 

左右バランスが 右58% : 左42% だった場合はどうでしょう。

 

データを見ていると、中には上記のように左右差が ±2-3% を超えているケースがあります。左右差があってもパフォーマンス向上に大きな影響はないと考えていますが、パフォーマンスそのものに影響が出ることがあります。

 

膝や腰の痛みです。

ロードバイクで膝を痛める3つの原因

少し深掘りして説明したいと思います。

 

左右のパワーバランスが異なることにおける弊害とは?

左右の差異が何を表しているのか。シンプルな話をすれば 左右の脚で発揮している出力の差です。 例えば、左右バランスが 右58% : 左42% の場合は、右足の方が多く力を出しているということになります。

 

この差は、短時間であればあまり考えることもないかもしれませんが、1時間、2時間と続いていくと、左右の脚で疲労する感覚が異なります。

 

一度イメージしてみましょう。左右バランスが 右58% : 左42% の場合、どちらの脚の方が先に疲れるでしょうか。おそらく右と答えられる方が多いでしょうし、実際にそうだと考えられます。

 

実はこうした状態に当てはまる方をカウンセリングしていくと、やはり割合の大きい方が疲労している、あるいは何らかの違和感を持っている方が多いです。例えば、走行中に疲れてくると右の膝が痛いとか、右の腰が痛い、といった内容です。

 

おそらくこれらは、使用された筋肉の一時的な炎症によるものだと思いますが、こうした状態が改善されずに継続すると、慢性的な症状に陥るケースがあると考えられますし、実際にそうだろうなと思われるケースを見ることもあります。

 

このように、ある程度の左右差が生まれると、不定愁訴やその先の怪我につながるケースが考えられるため、その差を抑える必要があると考えられます。ではどれくらいまで抑えれば良いのかという話ですが、論文でもあまりヒントになるものが出てこないので、指導経験にはなりますが ±2% 程度が問題があまり発生しない数値かなと感じています。

 

左右差の原因と改善策

ところで、このように左右差が生まれる原因はなんだと思いますか。様々なサイクリストの話を聞くと、意外と左右差に悩まされていて、どうにか改善できれば良いなと思っている方が多いことを感じます。

 

パーソナルトレーニングやパワートレーニングの指導をしている中で、以下の3つが関係しているのではないかと感じています。

 

  1. 筋力的な左右差
  2. 左右で動作(感覚)が異なる
  3. ポジションなどが異なる

 

目次

筋力的な左右差の場合

人間には利き手があるように、利き足もあります。走り幅跳びやハードル走をおこなう際、どちらの足で踏み切って飛んでいましたか。大体の方にとって、踏み切る方が利き足だと考えられます。

 

この場合、意識的に解決できないケースがあります。というのも純粋に発揮される筋力が異なるからです。こうした場合は、ストレングストレーニング、いわゆる筋トレで筋力を向上させることが最善方法だと考えられます。

 

そう伝えると “片側ずつのエクササイズがいいのか?” と考える方も多いと思いますが、左右対象となる動作であるスクワットやルーマニアンデッドリフトを高重量低回数で行うことをメインにしつつ、左右対象に片足で動く動作であるリバースランジやブルガリアンスクワットをサブで行うと、効率的かつ効果的に左右の筋力を可能な限り揃えることができると考えられます。

 

左右で感覚が異なる場合

例えば、右利きの人が左手で同じ文字を書いたときに、右手のように書けるかと言われれば、そうではありません。今まで右足でボールを蹴っていた人が左足でボールを蹴った時に、右ほど精密にコーナーをついたり威力があるわけではありません。それは、右左で自身が体内(脳内)に保管している感覚が違うからです。

 

自転車(ロードバイク)は、シューズとペダルが同一化し、そのまま固定されているため、見る限りでは左右均等な動きをしているように見えますが、実のところそうでなく左右の動作が異なるケースは多々あります。

 

こうしたケースの場合は、片足ペダリングなど、左右の動作をそれぞれ独立した中で感覚を作る必要もありますが、個人的にはピストバイク(固定ギア)で使って3本ローラーの上を乗り続ける方が習得が早いと思われます。(これは指導者としての経験です。)

 

ポジションなどが異なる場合

フィッティングしていると、たまにクリートの位置や向きが左右異なっていたり、シムを噛ませるなどして左右の高さが異なっているケースがあります。意図的に何かを考えて調整する人はいますが、何も考えずにセットした中で異なっているという人もいます。その場合、まず左右対象にしましょう

 

といいつつ、そうして左右対象にしたとしても左右差が出る場合があります。むしろそのケースが多いのですが、3つ上げた原因のその他2つの”どちらか”もしくは”その両方”が原因である方の方が多いので、結局別のアプローチをする必要があると考えられます。

 

ちなみに、個人的にはクリートの位置・無理やシムを利用するなどして左右差を調整するのは、 “骨または関節構造的に問題がある場合を除いて行わない” ようにしています。機能解剖的な問題であれば、各種運動やドリルで改善する、が一番かなと考えています。

 

左右差は多少あってもいいが、均等であることは好ましい

さて、長々と説明してきましたが、改めて結論を言いますと、左右のパワーバランスが均等であることに越したことはないが、左右均等だからと言ってパフォーマンス向上に関与しているかどうかは明確ではありません。

 

しかし、パワーバランスが極端に均等でない場合、身体的な障害が発生し、パフォーマンスに影響を与えてしまうことも考えられるため、可能な限り均等であることが良いと考えられます。

 

とはいうものの、様々な要因により完全な左右対称というのは難しいので、怪我をしないためにも最低でも左右のパワーバランスが±2%以内で収めることができるといいでしょう。そのためには、自身の左右差の原因が何かを理解し、適切なアプローチをする必要があると考えられます。

 

現在では、ペダリングのバランスを左右確認することができますし、自身の動作を数値化することができます。改善したい場合は、自身の動きを客観的に確認し、自身がどのパターンに分類されるか理解した上で、必要となるアプローチを行いましょう。

 

とはいうものの、そうしたアプローチは専門的な知識がない場合かなり難しいので、改善したい場合は一度専門家に依頼し、確認してもらいましょう。

 

ぜひ、参考にしてみてください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

【この記事を書いた人】
伊藤透

【保有資格 】
NSCA-CPT (LEVEL1)
健康運動指導士
日本スポーツ協会公認自転車競技コーチ3

【指導依頼】
パーソナルトレニングの依頼はこちら 
※ フィッティングもおこなっています。

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この記事を書いた人

愛知県名古屋市のロードバイクスクール。

小学生から大人まで幅広く指導しております。

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