こんにちは。
名古屋のロードバイクスクール 「 ORCA CYCLING SCHOOL 」の伊藤です。
こちらの記事では、ロードバイクのフィッティングについて解説していきます。
クリートについての質問です。
つま先?かかと?どちら寄りにしたほうがいいですか?
以上のような、クリートの位置の疑問と、その違いにおける体への反応についてお答えします。
: クリート位置 の基本的
: クリート位置 とパフォーマンス
: クリート位置 と膝の痛み
パフォーマンスだけでなく、カラダの痛みを感じないようにロードバイクに乗り続けるためには、最適なポジションを理解することが重要です。
こちらの記事を参考に、自身に合ったクリートの位置を探してみましょう。
クリート位置の基本
さまざまなバイクフィッティング理論を調べると、1st : 母指球(親指の付け根) と 5th : 小指球(小指の付け根) の間に、ペダルの車軸が収まる位置に取り付けることを推奨されていることが多いと感じてます。( AE Stuart , 2021 )
上記の図のように、母指球と小指球に対して並行に引かれた点線の範囲内に、ペダルの車軸が収まる位置に調整することを基本としたとき、その中心部分をニュートラルとしています。
本記事は、ニュートラルを基本としたエリアに対し、母指球またはそれよりもつま先側を前側 , 小指球またはそれよりもカカト寄りを後側とした定義した上で、パフォーマンスの変化や膝の痛みについて説明していきたいと思います。
ただし、これらのクリート位置は、足の形状によって異なるため、以下を参考にしながら自身のクリート位置を探してみましょう。
【足の形について】
>> ロードバイクのシューズの選び方
⚫︎ エジプト型
: 親指が一番前に出ている
⚫︎ ギリシャ型
: 人差し指が一番前に出ている
⚫︎ スクエア型
: 全ての指の位置が揃っている
クリート位置のパフォーマンスを考える
速く走ることや長く快適に乗り続けることを目的とした場合は、どの位置に取り付けるべきかと聞かれることがあります。そうした問い対して、私はクリート位置に正解と断言できる位置はないと伝えています。
それは、フレームのジオメトリーやクランクなどの機材的因子に、乗り手の身長や四肢の長さなどの身体的因子と掛け合わせると、最適となる考えられる位置は無数に存在するため、シチュエーションに応じて変更する必要があると考えているからです。
実際に、母指球基準に前後それぞれ15mmのクリート位置でタイムトライアルやスプリントをした際の運動生理学的な変化を調査した論文がありましたが、特にパフォーマンスが変わるということもなく( M Chartogne , 2022) 、別の論文ではサイクリングエコノミーが向上するといった変化もありませんでした ( JR Van Sickle Jr , 2007 / Carl D Paton , 2009 )。
とはいえ、クリート単体ではなく、サドルの高さなども考慮して全体的に最適なポジションを変化させた場合はパフォーマンスが向上すると考えられますので、パフォーマンスについて考える場合はポジションも同時に見直しましょう( S Jeroen , 2019 )。
膝の痛みを考える
ペダリングにおける膝の痛みは、膝関節の剪断力や大腿四頭筋への負荷の大きさが原因と言われています。( TE Johnston , 2017 )
膝関節の剪断力や大腿四頭筋の負荷を軽減するためにクリートの前後位置を変えるがあるのではと思われる方もいると思いますが、クリート位置の変化に伴い使用される筋肉が異なり膝の痛みが改善されるという論文は見かけません。
そのため、膝が痛いという症状を改善したい場合は、痛みが出ないようにペダリングをおこなえるクリート位置が正解となるため、つま先側・かかと側のどちらかが良いというわけではありません。
ですが、サドルの前後・上下を変えないままクリート位置を前後に変えた場合、微々たるものですが膝関節の関節角度とトルクに変化があると考えられます。イメージしやすい様、クランクの3時位置をもとに説明してみます。
クリートが前側に移動すれば、ペダル上で足の位置が後方に移動するため、膝関節が少し曲がる状態になり、踏み脚で膝関節を動かすトルクが少し増えます。そのため、大腿四頭筋の可動が増えると考えられます。(※スクワットで例えると、膝がつま先よりも前に出る状態)
反対に、クリートが後方に移動すれば、ペダル上で足の位置が前方に移動するため、膝関節が少し伸びる状態になり、踏み脚で膝関節を動かすトルクが少し減ります。そのため、大臀筋やハムストリングの可動が増えると考えられます。(※スクワットで例えると、膝がつま先よりも前に出ない状態)
以上のことから、クリートを踵寄りにする方が、膝の痛みを軽減できるのではないかと考えらています。
しかし、サドルの前後・上下位置を調整することで膝関節への負荷を緩和することができると考えられるため、必ずしもクリートを前側に出すことが膝を痛めるわけでも、クリートを後側に引くことで膝の痛みが緩和するわけでもありません。パフォーマンスと同様に膝の痛みを考える場合はポジションも同時に見直しましょう( S Jeroen , 2019 )。
「体の痛みをなくしたい…」と思う方へ
パフォーマンス向上や膝の痛みの改善といった目的目標は、クリート位置のみでどうにかなるわけでなく、サドル高や前後位置といったポジションと合わせて達成することができます。
とはいえ、クリート位置とポジションを両方変えてしまうと、カラダの感覚が大きく変わり、うまくペダリングがおこなえない場合があります。
そのため、適切なペダリングが習得できるように、ニュートラル位置を基準にしながら、徐々にクリート位置を調整しながら適度な位置を探しましょう。
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また、サイクリング中に感じる腰や膝の痛み、肩こりや首のつらさなどにより、サイクリングを楽しめないと感じる場合は、バイクフィッティングも行っておりますので、以下よりお問い合わせください。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
( AE Stuart,2021 ) The Effect of Cleat Position on Running Using Acceleration-Derived Data in the Context of Triathlons
( H François,2008 ) Electromyographic analysis of pedaling: a review
( M Chartogne , 2022 ) Acute effects of small changes in antero-posterior shoe-cleat position on physiological and biomechanical variables in road cycling
( JR Van Sickle Jr , 2007 ) Is economy of competitive cyclists affected by the anterior-posterior foot position on the pedal?
( Carl D Paton , 2009 ) Effects of shoe cleat position on physiology and performance of competitive cyclists.
( TE Johnston , 2017 ) THE INFLUENCE OF EXTRINSIC FACTORS ON KNEE BIOMECHANICS DURING CYCLING: A SYSTEMATIC REVIEW OF THE LITERATURE
( S Jeroen , 2019 ) Cycling Biomechanics Optimization-the (R) Evolution of Bicycle Fitting