こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。
おるか君パワートレーニングを始めたいです。
FTPとは何か、どうやって測るのかを教えてください。
FTP(Functional Threshold Power:機能的作業閾値パワー)とは、疲れがたまらずにほぼ一定の状態で走り続けられる上限のパワーのことです。もともとは「1時間全力で出し続けられる平均パワー」と定義されていましたが、実際にFTPで走り続けられる時間(TTE)は人によって30〜60分ほどと幅があることが分かっています。測り方は、20分間全力走の平均パワー × 0.95がもっとも一般的です。
この記事では、FTPの意味、目安、測り方、FTPとセットで知っておきたいTTE(持続時間)について、論文をもとに解説します。
FTPとは?意味をわかりやすく解説
FTPはパワートレーニングの基準になる数値です。練習の強度(パワーゾーン)や、TSS・CTLといった負荷の指標は、すべてFTPをもとに計算されます。つまりFTPが正しくないと、練習の強度も負荷の管理もずれてしまうということです。
FTPは長く「1時間発揮し続けられる最大パワー」と説明されてきました。ですが、実際にはFTPで1時間走り続けられない方が多いため、今ではもう少し生理学的に、体の中の乳酸がたまり続けずに保てる上限の強度(乳酸性作業閾値・最大乳酸定常=MLSSに近い強度)として考えられることが増えています。
FTPと乳酸性作業閾値(LT・MLSS)の関係
研究では、20分テストで求めたFTPは、乳酸の指標と集団の平均ではよく一致するものの、一人ひとりで見るとずれが大きいことが分かっています。
- FTPとMLSSの相関はとても高く(r=0.91)、トレーニングを積んだサイクリストならMLSSの目安として使える(Borszcz et al., 2019)
- FTPは血中乳酸4.0mmol/Lのパワーと平均ではほぼ同じだが、個人では最大で40〜50Wほどずれることがある(Jeffries et al., 2021)
- トレーニングを積んだ選手ではFTPと乳酸性作業閾値はほぼ一致するが、ホビー層ではFTPが低めに出やすい(Valenzuela et al., 2018)
なお、MLSSのときの乳酸の濃度は「4mmol/L」と説明されることが多いですが、実際には測り方によって変わり、個人差もあります(Beneke, 2003)。FTPは「乳酸性作業閾値の目安になる、現場で測りやすい数値」と考えるのがちょうどいいでしょう。
FTPの目安|体重あたり(W/kg)で考える
FTPは体格によって大きく変わるため、比べるときは体重1kgあたりのパワー(W/kg)で考えるのが一般的です。たとえば体重60kgでFTP200Wなら、約3.3W/kgです。
| レベルの目安 | FTP(W/kg) | 体重60kgの場合 |
|---|---|---|
| ロードバイクを始めたばかり | 2.0〜2.5 | 120〜150W |
| ロングライドやイベントを楽しむ | 2.5〜3.0 | 150〜180W |
| 地方レース・ヒルクライム大会で上位を狙う | 3.5〜4.0 | 210〜240W |
| 実業団・学連の上位 | 4.5〜5.0 | 270〜300W |
| プロ選手 | 5.5以上 | 330W以上 |
この表は、Coggan氏のパワープロファイルなどで示される数値をもとにした大まかな目安です。レースでは、FTPだけでなく短い時間のパワーやレースを走る技術も大きく関わるため、数字はあくまで参考にしてください。
FTPの測り方|20分テストとランプテスト
20分テスト(もっとも一般的)
FTP = 20分間全力走の平均パワー × 0.95
しっかりウォーミングアップをしたあと、20分間をできるだけ一定のペースで全力で走り、その平均パワーに0.95をかけます。以前は20分の前に5分間の全力走を入れる方法が一般的でしたが、今は5分走を省く方法も多く使われています。ペース配分が難しいので、最初の5分は抑えめに入るのがコツです。
具体的な手順は、Training Peaksの「How to Calculate Threshold Power, Heart Rate or Pace」が参考になります。
ランプテスト(Zwiftなど)
FTP = 最後までやり切った1分間の平均パワー × 0.75
1分ごとに負荷を上げていき、ペダルが回らなくなるまで続けるテストです。Zwiftでは100Wから1分ごとに20Wずつ上げる方法がよく使われます。20分テストよりきつい時間が短く、ペース配分もいらないのがメリットです。ただし、短い時間のパワーが強い方はFTPが高めに出やすいので注意しましょう。
| 20分テスト | ランプテスト | |
|---|---|---|
| かかる時間 | 約20分(+アップ) | 約10〜20分 |
| ペース配分 | 必要 | 不要 |
| 向いている人 | レース・ヒルクライムを走る方 | 初心者、室内トレーニング中心の方 |
| 注意点 | ペース配分を間違えると低く出る | スプリントが得意だと高めに出やすい |
TTEとは?FTPで走り続けられる時間
TTE(Time To Exhaustion)は、FTPの強度で走り続けられる時間を表す指標で、解析ソフトのWKOで使われるようになりました。FTPが同じ250Wの2人でも、TTEが30分の人と60分の人では、1時間のヒルクライムやタイムトライアルの結果は大きく変わります。
論文紹介:FTPで走り続けられる時間は人によって違う
Sitkoら(2022)は、レベルの異なるロードバイク選手を対象に、20分テスト(×0.95)でFTPを求め、そのパワーで疲れ切るまで走り続けられる時間を測りました。




| レベル | FTPで走り続けられた時間(中央値) |
|---|---|
| ホビー(レクリエーション) | 35分 |
| トレーニングを積んだ選手 | 42分 |
| よくトレーニングを積んだ選手 | 47分 |
| プロレベル | 51分 |
この結果から、FTPは「1時間出し続けられるパワー」ではないこと、そしてレベルや経験が上がるほどTTEが長くなることが分かります。別の研究でも、FTPで走り続けられた時間は平均約51分で、人によるばらつきが大きいと報告されています(Borszcz et al., 2018)。
TTEが伸びる理由は、乳酸を処理する能力などの体の要因だけでなく、きつくなってきても我慢してペースを保てるという心の要因も重なっていると私は感じています。だからこそ、TTEはトレーニングの経験を積むほど伸びていく可能性があります。
TTEの測り方
STRAVAやGarmin ConnectではTTEは自動で表示されません。TTEを知りたい場合は、WKO5を使うか、次のようなテストで確認できます。
- ターゲットFTPの92〜95%で10分間走る
- ターゲットFTPの100%に上げて15分間走る
- 10〜15分かけて、疲れ切るまで少しずつパワーを上げていく
参照:Training Peaks「The Physiology of FTP and New FTP Test Protocols」。このテストはTTEを伸ばすワークアウトとしても使えます。WKO5やTraining Peaksの使い方はTraining Peaksの登録方法と使い方で解説しています。
FTPを上げるためのトレーニング
FTPを上げるには、FTP付近の強度で走る時間を少しずつ増やしていくのが基本です。代表的なワークアウトは次の記事で解説しています。
- スイートスポットトレーニング(SST):FTPの88〜94%で長めに走る
- クリスクロス:FTP付近の上下をくり返し、レースのペース変化にも強くなる
- CTLを目安にした1週間のメニュー:練習量の目安と上げ方
1時間前後のヒルクライムやトライアスロンのバイクパートで結果を出したい方は、FTPを上げるだけでなく、TTEを伸ばすことにも目を向けたトレーニングを組みましょう。
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Q. FTPとは何の略ですか?
FTPはFunctional Threshold Power(機能的作業閾値パワー)の略です。疲れがたまらずにほぼ一定の状態で走り続けられる上限のパワーで、パワートレーニングの強度やTSSの基準になります。
Q. FTPはどうやって計算しますか?
もっとも一般的なのは、20分間全力で走った平均パワーに0.95をかける方法です。Zwiftなどのランプテストでは、最後までやり切った1分間の平均パワーに0.75をかけて求めます。
Q. FTPの目安はどのくらいですか?
体重1kgあたりで考えるのが一般的で、始めたばかりの方は2.0〜2.5W/kg、イベントを楽しむ方は2.5〜3.0W/kg、地方レースで上位を狙う方は3.5〜4.0W/kgが目安です。体重60kgなら、FTP200Wは約3.3W/kgになります。
Q. FTPで1時間走れないのはおかしいですか?
おかしくありません。研究では、FTPで走り続けられる時間(TTE)はホビー層で約35分、プロでも約51分でした。FTPは1時間出し続けられるパワーではなく、走り続けられる時間は人によって大きく違います。
Q. FTPはどのくらいの頻度で測ればいいですか?
3月(シーズン前)・7月(シーズン中)・11月(シーズン後)など、年2〜3回を目安に測るのがおすすめです。FTPが実際とずれると、練習の強度やTSS・CTLもずれてしまうため、定期的に見直しましょう。
まとめ
- FTPは走り続けられる上限のパワー:パワーゾーン・TSS・CTLの基準になる
- 測り方:20分全力走の平均 × 0.95、またはランプテストの最終1分 × 0.75
- 目安はW/kgで:体重60kgでFTP200Wなら約3.3W/kg
- FTPは1時間のパワーではない:TTEは人によって30〜60分ほど
- TTEも伸ばす:長いヒルクライムやTTではFTPとTTEの両方が大切
FTPの定義は今も研究が続いていて、これからも変わっていく可能性があります。それでも、FTPとTTEの考え方を理解しておくことで、自分に合った強度で、無駄なく練習を積み重ねられるようになります。
- Sitko S, Cirer-Sastre R, López-Laval I. Time to exhaustion at estimated functional threshold power in road cyclists of different performance levels. J Sci Med Sport. 2022;25(9):783-786. doi:10.1016/j.jsams.2022.06.007
- Borszcz FK, et al. Functional Threshold Power in Cyclists: Validity of the Concept and Physiological Responses. Int J Sports Med. 2018;39(10):737-742. doi:10.1055/s-0044-101546
- Borszcz FK, Tramontin AF, Costa VP. Is the Functional Threshold Power Interchangeable With the Maximal Lactate Steady State in Trained Cyclists? Int J Sports Physiol Perform. 2019;14(8):1029-1035. doi:10.1123/ijspp.2018-0572
- Valenzuela PL, et al. Is the Functional Threshold Power a Valid Surrogate of the Lactate Threshold? Int J Sports Physiol Perform. 2018;13(10):1293-1298. doi:10.1123/ijspp.2018-0008
- Jeffries O, et al. Functional Threshold Power Is Not Equivalent to Lactate Parameters in Trained Cyclists. J Strength Cond Res. 2021;35(10):2790-2794. doi:10.1519/JSC.0000000000003203
- Beneke R. Methodological aspects of maximal lactate steady state-implications for performance testing. Eur J Appl Physiol. 2003;89(1):95-9. doi:10.1007/s00421-002-0783-1
- Pinot J, Grappe F. The record power profile to assess performance in elite cyclists. Int J Sports Med. 2011;32(11):839-44. doi:10.1055/s-0031-1279773
- Allen H, Coggan A. Training and Racing with a Power Meter. VeloPress.
- TrainingPeaks. How to Calculate Threshold Power, Heart Rate or Pace. Webページ
- TrainingPeaks. The Physiology of FTP and New FTP Test Protocols. Webページ





