こちらのブログでは、ロードバイクのトレーニングについて解説しています。
Training Peaks を使いたいです。
ATPの使い方について教えてください。
以上のような、Training Peaks ( 以下 TP : トレーニングピークス )についての質問にお答えします。
✔︎ ATP を活用する前に
まずはTraining Peaks に登録しましょう。
※ プレミアムアカウントで活用できます。
ATP ( Annual Training Plan )とは?
ATPとは年間のトレーニングプランを作成する機能となります。
この機能は、自身の現状から達成したい目的目標までの道のりをサポートしてくれる役割があります。
以下を参考に設定してみましょう。
ATPを活用したプランニング
まず、画面上のATPを選択すると、以下の画面が表示されます。
つぎに、中央に出てくる Get Started をクリックすると、以下の画面が表示されます。
ここでは、以下の4つの項目を入力必要があります。
① Choose Training Methodology (左側 :上)
② Enter Details (左側 : 中)
③ Determine Training Volume (左側 :下)
④ Add Events (右側 : 全面)
それぞれ、順を追って確認していきましょう。
① Choose Training Methodology
Choose Training Methodologyでは、3つのうちどれを基準にトレーニングを構築するかを選びます。
以下を参考に選んでみましょう。
✔︎ 初級者 … Weekly hours
✔︎ 中級者 … TSS ( Weekly TSS )
✔︎ 上級者 … TSS / Event Fitness (CTL)
基本的にどれを選んでも問題ないと思いますが、こちらの記事では週間単位の運動時間またはTSSを考慮してプログラムを作成するための、初級者( Weekly hours ) と 中級者( TSS / Weekly TSS )を対象に書かせていただきたいと思います。
② Enter Details
Enter Details では、トレーニング期間や伸ばしたいパフォーマンスなどの情報を選びます。
・ ATP Name … プランの名前を決めます。
・ Date range … 9ヶ月~18ヶ月の間で設定します。
・ Periodization … “Automatic” か “Manual” を選択します。
・ Current Fitness … “Weak” か “Strong”を選択します。
・ Recovery Cycle … “Every 3weeks” か “Every 4 weeks” を選択します。
自身に合わせて、好きなものを選びましょう。
※ 必要であれば以下の項目をチェックしてください。
・Automatic … トレーニングがリードされる
・Manual … 自身でトレーニングを作る
何もなければAutomaticを選んでおくことをオススメします。
Automaticすると Cyclist Training Bible で有名はジョー・フリール氏のTraining Bibleのメソッドをベースに、何をすればいいのかをリードしてくれます。
自身がトレーニングノウハウを学び、トレーニング理論やプログラムデザインを理解していれば、Manual でもいいと思います。
・Weak … 基礎基本となる能力の向上にフォーカス
・ Strong … コンディションを上げることにフォーカス
※こちらに関しては、
・ Every 3weeks … 2週間トレーニング + 1週間休息
・ Every 4weeks … 3週間トレーニング + 1週間休息
基本的には初心者は 3weeks 、 中級者以上は 4weeks としています。
より細かく区切ると、指導経験上 CTL70未満は 3weeks 、 70以上は 4weeks としています。
③ Determine Training Volume
Determine Training Volumeは、①で選択した内容により、以下のように異なります。
こちらの記事では、初級者( Weekly hours ) と 中級者( TSS / Weekly TSS )を対象に書かせていただきたいと思います。
● Weekly hour を選んだ場合、以下のように表示されます。
Weekly Averageに、1週間に動くことが可能な時間を入力すると、以下のような時間が算出されます。
・ Easiest week … 休息予定の週単位の運動時間
・ Hardest Week … 強度を上げる週単位の運動時間
・ Approximate Annual … 年間を通した運動時間
● TSS ( Weekly TSS ) を選んだ場合、以下のように表示されます。
Weekly Average に、1週間に動くことが可能なTSSを入力すると、以下のような時間が算出されます。
・ Easiest week … 休息予定の週単位のTSS
・ Hardest Week … 強度を上げる週単位のTSS
・ Approximate Annual … 年間を通したTSS
また、 合わせてFitness(CTL) Start も入力しておきましょう。(現状のCTL)
ちなみに、それぐらいの数字がいいのか?と聞かれることがあるのですが、TPのページには”Suggest weekly TSS and Target CTL“という”自身のカテゴリー別で推奨される指標”があります。具体的な図は、以下のような形になります。
アメリカのレースカテゴリーになるのでわかりにくいと思いますが、国内レースで表すと以下のように区分できると考えております(一概にはこうとは言い切れないので、参考程度にどうぞ)。
自身がどのレースに参戦するか、またはどのレベルでレースを楽しみたいかを考えて、(トレーニングに慣れて)TSSを基準にトレーニングを行う場合の参考にしてみましょう。その他にもトライアスリート向けの指標がありますので、興味のある方は以下のリンクよりご確認ください。
→目的目標別に応じた時間・TSSの設定はこちら
④ Add Events
Add Events では、自身が参加する予定のイベントやレースを入力します。
・ Event name … イベント名を入力します。
・ Event Date … 開催日を入力します。
・ Type … イベントの種類を選択します。
→ ATP Event Type … 競技時間または距離を選択します。
→ Priority … イベントの重要度 ( A > B > C )を選択します。
・ Description … メモを記録します。
※ Add Goalsは入力しなくても問題ありません。
入力すると、以下のようにAdd Eventsの項目にレーススケジュールが追加されると同時に、別のページでもあるCalendarにも反映されます。
以上のように、①から④まで全ての項目を入力した後にCriate ATP をクリックしたら、トレーニングのプラグラムが作成されます 。
ATP の読み方
全て入力を終えると、1年間のトレーニングスケジュールが以下のように作成されます。
✔︎ ATP ではワークアウトは作成されない
こちらの記事を参考に、ATPでスケジュールを作成しても、自動的にワークアウトを作成してくれるわけではありません。ATPはあくまでもピリオダイゼーションを作成する上でのイメージを作成するものです。
ワークアウトの手順 (考え方) に関しては、以下の記事を参考にしてみましょう。
図の上段は帯グラフとなっておりますが、下段には”Week””Event”などの文字が表示されております。
上段のグラフを見ていただくと
・棒グラフの高さ
・棒グラフの下の色
が違うことに気づくと思います。
棒グラフの高さは1週間の運動時間を表します。
また、棒グラフの下の色はPeriod(期間目的)を表します。
Periodは、以下の5つの項目で表示されます。
・ Base … 基礎的な持久力および技術の習得
・ Build … レースに必要とされる能力の向上
・ Peak … レースに向けて刺激を入れる
・ Race … レースに向けた最終仕上げ
・ Transition … 休息 / 次のPeriodに備える
上記の中でも”Base 1-3″や”Build1-3″と分られていますが、これらはトレーニングの内容や量に細かい変化がもたらされています。
また、前編で休息を選択したと思いますが、当ブログでは”Every 4week”と選択したので、各Periodの4週目が休息となるように調整されております。それらも自身のフィットネスレベルに合わせて選択しましょう。
※トレーニング初心者の場合は”Every 3week”を選択し、徐々に慣れてきたら”Every 4week”にすることをオススメします。
Weak と Strong の違い
Enter Details の Current Fitness にて、WeakとStrongを選んだ事による違いを説明します。
以下の図を見てましょう。
※ 図上 : Weak / 図下 : Strong
こちらのグラフでは、赤枠の箇所が異なるピリオドとなります。
一番左の赤枠は、同じ”Base”というピリオドですが練習時間の量が少々異なりますし、一番右の赤枠は”Base(Weak)”と”Build(Strong)”で分かれています。
このWeakとStorongの違いを、各レース間のピリオドの違いから見ていきたいと思います。
以下の図を確認ください。
Weakの方が Base となるピリオドが多く、レース間にも基礎的な持久力としてのフィットネスを向上させるためのプログラムを推奨されるようになります。
Strongに方は Build となるピリオドが多く、レースにフォーカスしてレースに必要とされるパフォーマンスを向上させるためのプログラムを推奨されるようになります。
『どちらがいいのだろうか?』と悩まれる方も多いと思いますが、個人的な指導経験で言うとCTL70以上のサイクリストであればStrongを選んでもいいかなと考えています。
ただし、目的目標は各個人によって異なるので、明確な目的目標がある方は自身の予定に合わせて変えてみましょう。
Period 毎に推奨されるトレーニング
Periodによって推奨されるトレーニングについて説明します。
先ほどの図の右側に “Limiters – Bikes” と “Strength” という項目が表示されます。
Limiters – Bike は、バイクトレーニングについて案内をされます。
こちらに表記される項目は、以下の7種類になります。
Test
トレーニングを継続して4-6週間ほど経過したタイミングで、自身のフィットネスのテストをします。FTPテストや各時間帯のMMPテスト、インターバルの反復テストなど、自身の向上させたい能力に対してのトレーニングが適切だったどうか確認します。
Endurance ( 持久力 )
基礎的な持久力(長時間動き続けられることができる能力)を鍛えます。パワートレーニング のZ2-Z3域での走行に当たると考えられます。
Force (筋力)
登坂を利用し、トルクをかけるような走行で力強いペダリングを手に入れます。2-4%,4-6%などと斜度によってトレーニングの目的が違うので、自身に必要な能力に合わせて実施しましょう。
Speed Skill (スピード・スキル)
走行速度的な意味合いではなく”動作としてのスピードスキル”を表します。3本ローラーを利用したローギアの高ケイデンスなどのドリルを実施し、スムーズなペダリングを心がけた効率的な動作の習得などを狙います。※後のパフォーマンス向上に役立ちます
Muscular Endurance (筋持久力)
TTのように比較的ギアを長時間踏み続ける能力を鍛えます。パワートレーニング のZ4 – Z5域での走行に当たると考えられます。
Anaerobic Endurance (無酸素持久力)
ロングスプリントや短い上りでの能力を鍛えます。また、そうした無酸素運動における反復能力(Repeat Ability)の向上を目指します。パワートレーニング のZ6域での走行にあたると考えられます。
Power (最大出力)
コーナーの立ち上がりやスプリントの能力を鍛えます。パワートレーニング のZ7域での走行にあたると考えられます。また、この能力はForceおよびSpeed Skillを実施していくことで伸びていきます。
以上のような構成でトレーニングをリードしてくれます。
Strength は、ストレングストレーニング(筋トレ)について案内されます。
こちらに表記される項目は、以下の6種類になります。
AA = Anatomical Adaptation
ME = Muscular Endurance
MS = Maximum Strength
MT = Maximum Transition
PE = Power Endurance
SM = Strength Maintenance
全部説明したいところですが、指導させていただいている方々のATPを作成すると”MS”または”SM”が主に出てくるので、その2つを説明します。
Maximum Strength
最大筋力の向上を狙います。 冬場のトレーニングとして”8〜12週間ほど、週2〜3回の頻度”で実施することをオススメしています。詳しく調べてみると、2〜6setを3〜6repと書かれていますが、個人的な指導経験上および様々な理由により、もし今までストレングストレーニングを実施されていない方のATPのMSが出てきた場合は”4~8週間ほど、週2〜3回の頻度で2~5setを6~10rep”で実施した方が良いかもしれません。
Strength Maintenance
筋力を維持します。インシーズンになるとTraining PeaksのATP上では N/A ( Not Applicable )と記載されておりますが、指導経験上および様々な理由により、最低でも週1回の頻度で実施することをオススメしています。
それぞれのトレーニング方法や種目につきましては、Limiters-Bikeと同じように書いてないのかと思いきや Training PeaksのHelp Centerに記載されていますので以下を参照ください。
→ATP Strength Phase Workout
このように、Periodから考えられるLimiters – BikesとStrengthのテーマからトレーニングを組み立てていくと、フィットネスを向上させるために非常に有効なプログラムが出来上がるはずです。
是非、参考にしてみてください。
ATP は正しいのか
ATP を活用することで、目標としているレースへ挑むまでの道のりをうまくリードしてくれます。
が、ATP通りにトレーニングをすればパフォーマンスがあがるのかというと、そうでもありません。曖昧ですが上がることもあるし、上がらないこともあるとしか言いようがありません。
トレーニングには個別性があるため、トレーニングプログラムに漸進性過負荷を持たせていても、フィットネスが反応しないことあります。最終的には、トレーニングにアクセントを持たせる必要があります。
例えば、Baseの期間にWeek1-3までの間でDuration(積算運動時間)が全身的に増えていきますが、Week1からWeek3まで週10時間で固定してもいいですし、なんならWeek4を休息にもしなくてもいいこともあります。また、Buildの期間にStrengthがN/Aになっていても筋肉量(または筋力)が必要だと感じたならば実施しても良いと思います。
最終的に、ATP関係なく自身に適切なトレーニングができていれば体力は向上します。しかし、ATPを活用することでピリオダイゼーションの明確化とテーパリングやピーキングのタイミングなどを知ることができるため、自身のパフォーマンスを十分に発揮するための準備をサポートしてくれるでしょう。
もし、トレーニングでお悩みの方は、まず初めにこちらの記事を参考に自身のATP(ピリオダイゼーション)を作成してみましょう。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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