こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「ORCA CYCLING SCHOOL」です。
おるか君ロードバイクに乗ると、脚の付け根(股関節の前側)が詰まるように痛くなります。
ポジションが原因でしょうか?
ロードバイクで股関節の前側が詰まるように痛む場合、多くはペダルが一番上に来たときに股関節が深く曲がりすぎていることが原因です。サドルの高さ・前後とハンドルの位置をセットで見直すと、改善しやすくなります。
この記事では、痛む場所ごとの原因と、ポジションの見直し方を研究データをもとに解説します。
ロードバイクで股関節が痛くなるのはなぜ?
ロードバイクは、前かがみの姿勢で股関節を曲げたまま、何千回もペダルを回すスポーツです。ケイデンス90rpmなら1時間で約5,400回。1回ごとの負担は小さくても、股関節が深く曲がる位置を何度も通ることで、痛みにつながります。
アメリカの一般サイクリスト518人を対象にした調査では、脚の付け根・お尻(groin/buttocks)の痛みや不調は36.1%にみられ、首、膝に次いで3番目に多い部位でした(Wilber et al., 1995)。股関節まわりの不調は、決してめずらしいものではありません。自転車の外傷以外の障害をまとめた総説でも、膝、首・肩、手、お尻や股が主な部位として挙げられています(Dettori & Norvell, 2006)。
また、乗車中の骨盤は止まっているわけではなく、ペダルを踏み下ろす側へ約3度回旋し、約2度横に傾くことがわかっています(Sauer et al., 2007)。サドルの高さや形が合わないと、この骨盤の動きが大きくなり、股関節やお尻の横に負担がかかります。
痛む場所でわかる原因
股関節の痛みといっても、痛む場所は人によって違うため、原因を一つに決めつけることはできません。ただし、痛む場所がわかれば、おおよその原因と見直すポイントは絞り込めます。
痛む場所ごとに表にまとめたので、まずは自分に近いものを確認してみましょう。
| 痛む場所 | 考えられる原因 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 前側 (脚の付け根が詰まる) | ペダルの上死点で股関節が深く曲がりすぎている | サドルの高さ・前後、ハンドルの高さ・距離、クランク長 |
| 前側 (付け根の筋肉が張る) | 脚を引き上げる筋肉(腸腰筋)の使いすぎ | 引き足の意識、お尻・太もも裏の使い方 |
| 外側 (お尻の横) | サドルが高すぎて骨盤が左右に揺れる | サドルの高さ、サドルの形・幅 |
| お尻の奥・坐骨まわり | サドルの幅・形が骨盤に合っていない | サドルの選び方、サドルの角度 |
| 片側だけ | 脚長差、クリート位置、骨盤の傾き | クリート、インソール、左右差 |
① 前側が詰まる:股関節が深く曲がりすぎている
もっとも多いタイプです。
ペダルが一番上(上死点)に来たとき、太ももとお腹の距離がもっとも近くなります。このとき、サドルが低い・サドルが前すぎる・ハンドルが遠く低いと、股関節はさらに深く曲がり、付け根の前側が「詰まる」ように痛みます。
股関節の形に個人差がある人(大腿骨寛骨臼インピンジメント:FAI)は、深く曲げたときに骨同士がぶつかりやすく、痛みが出やすくなります。股関節痛のある自転車選手についての臨床レビューでは、股関節の動きを考えたバイクフィッティングが、症状の管理方法の一つになると述べられています(Wadsworth & Weinrauch, 2019)。
② 前側の筋肉が張る:脚を引き上げすぎている
「引き足を使う」ことを意識しすぎると、脚を引き上げる腸腰筋(股関節の前の筋肉)を使いすぎて、付け根が張ったり痛くなったりします。ペダリングは、踏み下ろしでお尻と太もも裏をしっかり使うことが基本です。
③ お尻の横が痛む:サドルが高すぎる
サドルが高すぎると、ペダルが一番下に来たときに脚が届かず、骨盤が左右に揺れます。その結果、お尻の横の筋肉(中臀筋)や股関節の外側に負担がかかります。サドルの高さを変えると、足首・膝・股関節の動きがすべて変わることも確認されています(Bini et al., 2010)。
④ 片側だけ痛む:左右差がある
右だけ、左だけ痛む場合は、脚の長さの差、クリート位置の左右差、骨盤の傾きなどが考えられます。左右差の原因は「ロードバイクのペダリング効率と左右差」でも解説しています。
原因がポジションかどうか、自分では判断しにくい方へ
ORCAのバイクフィッティングでは、ペダリングの動きを見ながら、サドル・ハンドル・クリートをまとめて調整します。
名古屋のバイクフィッティングの詳細を見る →セルフチェックとポジションの見直し方
上のような状態になっていないか、スマートフォンで動画や写真を撮って確認してみましょう。
次の項目に当てはまる場合は、その下で紹介するポジションや機材の見直しを試してみてください。
- ペダルが一番上に来たとき、太ももがお腹に当たりそうになっていないか
- ペダルが一番下に来たとき、腰が左右に揺れていないか(後ろから動画を撮ると確認しやすい)
- ハンドルを握ったとき、腕が伸びきっていないか・前に乗り出していないか
- サドルの先端に座っていないか(前に座るほど股関節は深く曲がる)
- 片側だけ痛い場合、左右のクリート位置やシューズに差がないか
① サドルの高さ
低すぎると股関節が深く曲がり、高すぎると骨盤が左右に揺れます。
どちらも股関節の痛みにつながるため、膝の角度を目安にちょうどよい高さに合わせることが大切です。
目安の計算方法は「ロードバイクのサドル高さの目安」で紹介しています。
② サドルの前後位置
サドルが前すぎると、上死点で股関節が詰まりやすくなります。
ただし後ろに下げすぎると、今度はハンドルが遠くなり、上体が前に倒れて股関節が深く曲がります。
サドル前後とハンドル位置はセットで調整しましょう。
③ ハンドルの高さと距離
ハンドルが低く遠いほど上体が前に倒れ、股関節の曲がりは深くなります。
付け根が詰まる場合は、ステムを短くする・ハンドルを上げることで、股関節の角度に余裕が生まれます。
④ クランクの長さ
クランクが長いほど、ペダルの上死点で膝と股関節は深く曲がります。
立ちこぎの研究でも、クランクが長くなるほど踏み始めの膝と股関節の曲がりが大きくなることが示されています(Park et al., 2021)。
身長に対してクランクが長い方は、短いクランクに替えることで股関節の詰まりが軽くなる場合があります。
⑤ クリートとシューズ
クリートの向きや左右の位置は、膝だけでなく股関節の向きにも影響します。
くわしくは「ロードバイクのクリート位置の決め方」をご覧ください。
体のケアとトレーニング
股関節の痛みには、ポジションだけでなく筋肉のコンディションも影響します。ストレッチで柔軟性を高めながら、必要に応じてトレーニングで筋力をつけていきましょう。
- 股関節の前のストレッチ:片膝立ちで骨盤を前に押し出し、付け根の前を伸ばす
- お尻のストレッチ:仰向けで足を組み、お尻の奥を伸ばす
- お尻の筋力トレーニング:踏み下ろしでお尻を使えるようにすると、付け根の筋肉の使いすぎが減る
お尻や体幹の筋力は、ポジションを保つ土台にもなります。乗車以外でのトレーニングも取り入れたい方は、ロードバイク・トライアスロンのためのパーソナルトレーニングもご覧ください。
医療機関を受診する目安
次のような場合は、ポジションの問題だけではない可能性があります。フィッティングだけでは改善しないこともあるため、無理に乗り続けず、整形外科などを受診してください。
- 乗っていないときや夜間にも痛む
- 股関節を動かすと引っかかる感じ・音がある
- 靴下をはく、あぐらをかくなどの動作がしにくくなった
- 強く踏んだときだけ、太もも全体が張る・しびれる・力が入らなくなり、休むとすぐ治まる
最後のような症状は、自転車選手に多い外腸骨動脈内膜線維症という血管の病気の可能性があります。運動中に太ももがふくらむような感覚が出るのが特徴で、安静時の検査では異常が見つかりにくいとされています(Abraham et al., 1997)。気になる場合は、血管外科などの専門医に相談しましょう。
まとめ
ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。
股関節の痛みは、サドル・ハンドル・クランク・クリートのどれか一つではなく、組み合わせで起こることがほとんどです。
ORCA CYCLING SCHOOLのフィッティングでは、体の柔軟性や左右差を評価したうえで、ペダリング動作を見ながらポジションを調整します。
▶︎ ORCAのバイクフィッティングの詳細を見る
▶︎ フィッティングの種類や料金相場は「ロードバイクのフィッティングとは?」
▶︎ 実際の事例は「右腰の痛みと股関節の歪み改善のためのフィッティング」
▶︎ 腰の痛みもある方は「ロードバイクで腰が痛い5つの原因と改善方法」
気になることがあれば、公式LINEアカウントからお気軽にご質問ください。
フィッティングに関するご質問は、LINEからのみ受け付けています。
@orca-school をお友達登録していただいたのちに、メッセージをお送りください。
※ 記事に関するご質問のみ返答させていただきます。個人のトレーニングについての質問は受け付けておりません。
- Wilber CA, Holland GJ, Madison RE, Loy SF. An epidemiological analysis of overuse injuries among recreational cyclists. Int J Sports Med. 1995;16(3):201-6. doi:10.1055/s-2007-972992
- Wadsworth DJS, Weinrauch P. The role of a bike fit in cyclists with hip pain. A clinical commentary. Int J Sports Phys Ther. 2019;14(3):468-486. doi:10.26603/ijspt20190468
- Sauer JL, Potter JJ, Weisshaar CL, Ploeg HL, Thelen DG. Influence of gender, power, and hand position on pelvic motion during seated cycling. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(12):2204-11. doi:10.1249/mss.0b013e3181568b66
- Bini RR, Tamborindeguy AC, Mota CB. Effects of saddle height, pedaling cadence, and workload on joint kinetics and kinematics during cycling. J Sport Rehabil. 2010;19(3):301-14. doi:10.1123/jsr.19.3.301
- Park S, Roh J, Hyeong J, Kim S. Effect of crank length on biomechanical parameters and muscle activity during standing cycling. J Sports Sci. 2022;40(2):185-194. doi:10.1080/02640414.2021.1982516
- Abraham P, Saumet JL, Chevalier JM. External iliac artery endofibrosis in athletes. Sports Med. 1997;24(4):221-6. doi:10.2165/00007256-199724040-00001
- Dettori NJ, Norvell DC. Non-traumatic bicycle injuries: a review of the literature. Sports Med. 2006;36(1):7-18. doi:10.2165/00007256-200636010-00002
よくある質問
Q. ロードバイクで脚の付け根が詰まるように痛いのはなぜですか?
ペダルが一番上に来たときに、股関節が深く曲がりすぎていることが多い原因です。サドルが低い・前すぎる、ハンドルが遠く低い、クランクが長いといった条件で起こりやすくなります。サドルの高さとハンドル位置をセットで見直しましょう。
Q. 片側の股関節だけ痛いのはなぜですか?
脚の長さの差、クリート位置の左右差、骨盤の傾きなどが考えられます。左右で同じポジションでも、体の左右差によって片側だけに負担が集中することがあります。
Q. サドルを上げれば股関節の痛みは治りますか?
サドルが低すぎる場合は、上げることで股関節の詰まりが軽くなります。ただし上げすぎると骨盤が左右に揺れて、お尻の横や股関節の外側が痛くなります。膝の角度を目安に、ちょうどよい高さに合わせることが大切です。
Q. 引き足を意識すると股関節が痛くなります。
脚を引き上げる筋肉(腸腰筋)を使いすぎている可能性があります。ペダリングは踏み下ろしでお尻と太もも裏を使うことが基本です。引き足は意識しすぎず、踏み下ろしの質を高めましょう。
Q. ストレッチだけで股関節の痛みは改善しますか?
柔軟性が原因の一部であれば改善することもありますが、ポジションが合っていない場合はストレッチだけでは解決しにくいです。ストレッチとあわせて、サドルやハンドルの位置も確認しましょう。
Q. どんな症状なら病院を受診すべきですか?
乗っていないときや夜間にも痛む、股関節に引っかかりや音がある、日常動作がしにくい場合は整形外科を受診してください。強く踏んだときだけ太もも全体が張る・力が入らなくなる場合は、血管の病気の可能性があるため専門医に相談しましょう。
Q. フィッティングで股関節の痛みは改善しますか?
ポジションが原因の場合は、サドル・ハンドル・クランク・クリートを体に合わせることで改善が期待できます。股関節痛のある自転車選手についての臨床レビューでも、バイクフィッティングは症状の管理方法の一つとされています。








