ヒルクライムで膝が痛くなる理由と対策|登りで膝痛が起きる仕組みを論文で解説

ヒルクライムで膝が痛くなる理由と対策

こんにちは。

名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。

おるか君

ヒルクライムをすると、膝が痛くなります。

平地では平気なのに、なぜ登りだけ痛くなるんですか?

ヒルクライムで膝が痛くなるのは、登りでケイデンスが下がり、1回ごとにペダルを踏む力が大きくなるためです。軽いギアでケイデンスを保ち、サドルの高さとクリートを見直すと、膝への負担を減らせます。

この記事では、ヒルクライム(登り)でなぜ膝が痛くなるのかを、研究データをもとに解説します。

この記事は、登りで膝が痛くなる・違和感がある方を対象にしています。膝が腫れている、熱を持っている、歩くだけでも痛む場合は、まず整形外科を受診してください。膝の痛み全体の原因と対策は「ロードバイクで膝が痛い3つの原因と解決方法」で解説しています。

目次

ヒルクライムで膝が痛くなる人は多い?

膝はサイクリストの使いすぎによるケガで最も多い部位です。プロのロードレース選手109名の調査では、過去12ヶ月に36%が膝の前側の痛みを経験し、練習や試合を休む原因になったケガの57%が膝でした(Clarsen, 2010)。サイクリスト全体でも、膝の使いすぎによる痛みは約50%に起こるとされています(Bini, 2011)。

ヒルクライム中の膝の痛みだけを直接調べた研究は多くありませんが、登りでのペダリングの研究と、膝にかかる力の研究を組み合わせると、登りで膝が痛くなりやすい理由が見えてきます。

登りで膝に何が起きているのか

ヒルクライムを想定してペダリング中の膝と足の動きを確認する様子

① ケイデンスが落ち、1回ごとの踏み込みが重くなる

登りでは、同じパワーを出していてもケイデンスが下がりやすくなります。実走で計測した研究では、9.25%の登りを60rpmで走ったときのピークトルクは、平地を100rpmで走ったときより42%大きくなりました(Bertucci, 2005)。8%の登りを座って走った研究でも、ケイデンスが下がるぶんピークトルクが高くなっていました(Caldwell, 1998)。

② 負荷が高く、ケイデンスが低いほど膝のお皿に負担がかかる

競技レベルのサイクリスト12名の研究では、最大強度のときは中程度の強度より膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかる圧迫力が18%大きく、同じ強度でも90rpmで回したときは70rpmより29%小さくなりました(Bini & Hume, 2013)。

膝の太ももの骨とすねの骨の間(脛骨大腿関節)にかかる力も、ペダルの負荷が大きくなるほど増えることがわかっています(Ericson & Nisell, 1986)。さらに、ペダルのパワーが上がると、股関節・膝・足首にかかる力は前後方向だけでなく、内外方向やねじれの方向にも大きくなることが示されています(Martín-Sosa, 2025)。

③ 太もも前の筋肉が頑張り続ける

負荷が上がるほど、太もも前側(大腿四頭筋)と太もも裏の筋肉の活動は大きくなります(da Silva, 2018)。長い登りで太もも前側ばかりに頼った踏み方を続けると、膝のお皿まわりに負担が集中しやすくなります。

一方、傾斜を0%から8%に変えても、座ったまま同じパワーで漕ぐ限り、脚の筋肉の使い方のパターンは大きく変わりませんでした(Li & Caldwell, 1998)。つまり、登りで膝が痛くなるのは「動きが変わる」からではなく、「重い踏み込みが長く続く」からだと考えられます。

痛む場所でわかる原因

痛む場所登りで起こりやすい理由見直すこと
前側(お皿の周り・下)低いケイデンス・高いトルクで膝蓋大腿関節の圧迫力が増える。サドルが低いとさらに増えやすいギアとケイデンス、サドルの高さ
内側踏む力が大きくなると、膝が内側へ入る動きやねじれが大きくなりやすいクリートの向き・左右位置、足のアーチ、膝の軌道
外側腸脛靭帯が骨とこすれやすい膝の角度(約30度)を何千回も通る。サドルが高すぎると起こりやすいサドルの高さ・前後、クリートの向き
膝裏サドルが高く、下死点で膝が伸び切っているサドルの高さ、クリートの前後位置

膝に痛みのあるサイクリストは、ペダリング中に膝が内側へ入る動きが大きい傾向があります(Bini & Flores Bini, 2018)。腸脛靭帯は膝の角度が約30度のところで骨とこすれやすく、下死点付近(膝の角度約33度)はちょうどその範囲に入ります(Farrell, 2003)。サドルを低くするほど膝蓋大腿関節への圧迫力は大きくなる傾向があります(Bini, 2011)。

ダンシング(立ちこぎ)と膝の関係

ダンシングをすると、座っているときよりペダルにかかる力のピークが大きくなり、クランクの回転の中でも遅いタイミングで最大になることがわかっています(Caldwell, 1998)。太もも前側やお尻など、股関節と膝を伸ばす筋肉の活動も大きく、長くなります(Li & Caldwell, 1998)。

高い強度では立ったほうが長く続けられるという研究もあり(Hansen & Waldeland, 2008)、ダンシング自体が悪いわけではありません。ただし膝への負担は増えるため、膝に痛みがある時期は、長く続けるより、姿勢やリズムを変えるために短く使うのがおすすめです。

原因がポジションかどうか、自分では判断しにくい方へ

ORCAのバイクフィッティングでは、ペダリングの動きを見ながら、サドル・ハンドル・クリートをまとめて調整します。

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ヒルクライムの膝痛対策

軽いギアでケイデンスを保つ

膝のお皿にかかる力は、同じ強度でもケイデンスが高いほうが小さくなります(Bini & Hume, 2013)。長い登りでケイデンスが大きく落ちる場合は、スプロケットの大きいギアやコンパクトクランクなど、より軽いギアを用意するのが効果的です。

サドルの高さを見直す

ロードバイクのサドル高さの調整

サドルが低いと膝の前側、高すぎると膝裏や外側に負担がかかりやすくなります。下死点で膝の曲がり角度が25〜35度になる高さを目安にしましょう。目安の計算は「サドル高さ計算ツール」で確認できます。

クリートの向きと位置を見直す

踏む力が大きい登りほど、クリートの向きのわずかなズレが膝のねじれにつながります。足の自然な向きに合わせて取り付け、正面から膝がまっすぐ上下に動いているか確認しましょう。

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お尻・太もも裏も使うペダリングにする

太もも前側だけで踏むのではなく、お尻や太もも裏も使って股関節から踏み込むと、膝まわりへの負担を分散しやすくなります。必要な筋力をつけたい方は、持久系スポーツ専門のパーソナルトレーニング(ORCA PERSONAL GYM)もご活用ください。

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登る量は少しずつ増やす

急に登りの練習を増やすと、膝が負荷に慣れる前に痛みが出やすくなります。獲得標高や登りの本数は少しずつ増やしましょう。

医療機関を受診する目安

こんな症状があれば受診を
  • 膝が腫れている、熱を持っている
  • 膝がぐらつく、引っかかる、曲げ伸ばしができない
  • 歩く・階段の上り下りなど、日常生活でも痛む
  • 安静にしていても痛む、夜に痛む
  • 休んでも1〜2週間ほど改善しない

登りで速くなるための練習メニューは、ヒルクライムが速くなる練習方法で紹介しています。

まとめ

ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

ヒルクライムで膝が痛くなるのは、登りではケイデンスが下がり、1回ごとにペダルを踏む力(トルク)が大きくなるためです。研究では、負荷が高いほど、またケイデンスが低いほど、膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかる圧迫力が大きくなることが示されています(90rpmは70rpmより約29%小さい)。対策は、軽いギアでケイデンスを保つ、サドル高さとクリートを見直す、お尻・太もも裏も使うペダリングにする、ダンシングは短く使うことです。

ヒルクライムの膝痛は、ギア・サドル・クリート・ペダリングが重なって起こることがほとんどです。自分で見直しても改善しない場合は、ORCAのフィッティングで、動作評価とidmatchクリートフィッティングをもとに原因を確認しながら調整します。

この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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参考文献
  • Clarsen B, Krosshaug T, Bahr R. Overuse injuries in professional road cyclists. Am J Sports Med. 2010;38(12):2494-501. doi:10.1177/0363546510376816
  • Bini R, Hume PA, Croft JL. Effects of bicycle saddle height on knee injury risk and cycling performance. Sports Med. 2011;41(6):463-76. doi:10.2165/11588740-000000000-00000
  • Bertucci W, Grappe F, Girard A, Betik A, Rouillon JD. Effects on the crank torque profile when changing pedalling cadence in level ground and uphill road cycling. J Biomech. 2005;38(5):1003-10. doi:10.1016/j.jbiomech.2004.05.037
  • Caldwell GE, Li L, McCole SD, Hagberg JM. Pedal and crank kinetics in uphill cycling. J Appl Biomech. 1998;14(3):245-259. doi:10.1123/jab.14.3.245
  • Bini RR, Hume PA. Effects of workload and pedalling cadence on knee forces in competitive cyclists. Sports Biomech. 2013;12(2):93-107. doi:10.1080/14763141.2012.731428
  • Ericson MO, Nisell R. Tibiofemoral joint forces during ergometer cycling. Am J Sports Med. 1986;14(4):285-90. doi:10.1177/036354658601400407
  • Martín-Sosa E, Mayo J, Ojeda J. Effects of workload on 3D joint moments in cycling and their implications for injury prevention. Front Bioeng Biotechnol. 2025;13:1657558. doi:10.3389/fbioe.2025.1657558
  • da Silva JCL, et al. Effect of increasing workload on knee extensor and flexor muscular activity during cycling as measured with intramuscular electromyography. PLoS One. 2018;13(8):e0201014. doi:10.1371/journal.pone.0201014
  • Li L, Caldwell GE. Muscle coordination in cycling: effect of surface incline and posture. J Appl Physiol. 1998;85(3):927-34. doi:10.1152/jappl.1998.85.3.927
  • Hansen EA, Waldeland H. Seated versus standing position for maximization of performance during intense uphill cycling. J Sports Sci. 2008;26(9):977-84. doi:10.1080/02640410801910277
  • Bini RR, Flores Bini A. Potential factors associated with knee pain in cyclists: a systematic review. Open Access J Sports Med. 2018;9:99-106. doi:10.2147/OAJSM.S136653
  • Farrell KC, Reisinger KD, Tillman MD. Force and repetition in cycling: possible implications for iliotibial band friction syndrome. Knee. 2003;10(1):103-9. doi:10.1016/s0968-0160(02)00090-x

よくある質問

Q. ヒルクライムで膝の前(お皿の周り)が痛くなるのはなぜですか?

登りではケイデンスが下がり、1回ごとの踏み込み(トルク)が大きくなります。研究では、ケイデンスが低いほど、また負荷が高いほど、膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかる圧迫力が大きくなることが示されています。サドルが低い場合は、さらに負担が増えやすくなります。

Q. ケイデンスはどのくらいを目安にすればいいですか?

研究では、同じ強度で90rpmのほうが70rpmより膝のお皿にかかる力が約29%小さくなりました。登りでも極端に低いケイデンスにならないよう、ギアを軽くして回せる範囲を保つのがおすすめです。

Q. ダンシング(立ちこぎ)は膝に悪いですか?

立ちこぎでは太ももの筋肉の活動が増え、ペダルにかかる力も大きくなります。短く使う分には問題ありませんが、長い時間続けると膝への負担が増えるため、姿勢を変えるために短く挟む使い方がおすすめです。

Q. ギアはどのくらい軽くすればいいですか?

登る坂の斜度や体重、脚力によって異なります。長い登りでケイデンスが大きく落ちてしまう場合は、スプロケットの大きいギアやコンパクトクランクなど、より軽いギアを検討しましょう。

Q. 登りで膝の内側が痛いときは?

踏む力が大きくなると、膝が内側へ入る動きやねじれも大きくなりやすくなります。クリートの向きや左右位置、足のアーチを見直し、正面から膝の軌道を確認してみてください。

Q. 痛いまま登り続けても大丈夫ですか?

おすすめしません。痛みをかばって乗ると、反対の脚や腰に負担が移ることがあります。強い痛みや腫れがある場合は乗るのを控え、医療機関を受診してください。

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この記事を書いた人

伊藤 透のアバター 伊藤 透 ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ

ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ。日本スポーツ協会公認 自転車コーチ レベル3、健康運動指導士・健康運動実践指導者、NSCA認定パーソナルトレーナー。指導歴約16年。

ジュニアからトップ選手まで指導し、全日本自転車競技選手権大会ロードレース優勝、全日本学生選手権個人ロードレース大会優勝などの指導実績があります。

名古屋・久屋大通で、動作評価とidmatchクリートフィッティングによるロードバイクフィッティングを行い、膝や腰の痛みの改善とパフォーマンス向上をサポートしています。

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