小さい頃から自転車競技を始めるメリットと注意点|後から始めた選手に抜かれる理由

小さい頃から始める自転車競技のメリットと注意点

こんにちは。

名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。

おるか君

子どもが自転車競技を始めました。

小さい頃から自転車だけに集中させたほうが、速くなりますか?

小さい頃から自転車競技を始めることには、バイクコントロールと回転力が身につきやすいという大きなメリットがあります。一方で、自転車だけを続けていると、筋力や瞬発力などの基礎体力が伸びにくく、後からほかのスポーツから転向してきた選手に追い抜かれることもあります。

この記事では、ジュニア選手を指導している立場から、小さい頃から自転車競技を始めるメリットと注意点、後から始めた選手に追い抜かれる理由を、研究をもとに解説します。

目次

後から始めた選手に追い抜かれる現象

ジュニア選手を指導していると、小さい頃から自転車競技だけを続けてきた選手よりも、もともとほかのスポーツをしていた選手のほうが速く、上手に乗りこなす場面を見かけることがあります。

  • 小学生・中学生の頃は優勝や入賞を繰り返していたのに、高校生や大学生になって、ほかの競技から転向してきた選手に追い抜かれる
  • 高校生や大学生の頃から始めていたのに、社会人になって、ほかのスポーツから転向してきた選手に追い抜かれる
  • 社会人になってから先に始めたのに、ほかのスポーツから転向してきた社会人選手に追い抜かれる

練習時間の確保や練習の質など、理由はいろいろ考えられます。しかし、さまざまな年代やレベルの選手を見てきた中で、最も大きな原因の1つは、基礎となる「行動体力」の違いだと考えています。骨格の成長の速さなども影響しますが、もともとの運動能力(いわゆる運動神経)の高さの影響がいちばん大きいように感じます。

行動体力とは?自転車だけでは伸びにくい能力

体力の分類(行動体力と防衛体力)

体力のうち、体を動かすための力を「行動体力」と呼びます。行動体力の「機能」は、次の7つに分けられます。

能力内容自転車競技を続けると
筋力筋肉が力を発揮する能力伸びにくい
瞬発力爆発的に体を動かす能力伸びにくい
持久力体を動かし続ける能力高まる
敏捷性素早く体を動かす能力伸びにくい
平衡性体のバランスを保つ能力高まる
協応性動作を組み合わせて動く能力伸びにくい
柔軟性筋肉と腱が伸びる能力伸びにくい・落ちやすい

自転車競技を続けると、持久力や平衡性は高まりますが、それ以外の能力が大きく伸びることは少なく、むしろ落ちていくこともあります。たとえば、ヒルクライムが速くなってもスクワットの重量(筋力)やジャンプ力(瞬発力)が上がるわけではありませんし、脚の可動域(柔軟性)が広がるわけでもありません。

最も短い板の高さまでしか水が入らない桶

パフォーマンスは、上の図の桶のようなものです。どれだけほかの板が高くても、いちばん短い板の高さまでしか水は入りません。持久力だけを伸ばし続けても、ほかの体力が足りなければ、いずれ頭打ちになります。反対に、さまざまな体力が高いと、動きのバリエーションが広がり、力強く、あるいは楽にバイクを進められるようになります。

研究からわかる、ジュニア期の過ごし方

① 世界トップの選手は、子どもの頃に多くのスポーツを経験していた

6,000名以上の選手(世界トップレベルの選手772名を含む)のデータを分析した研究では、大人になって世界トップレベルになった選手は、国内レベルの選手に比べて、子どもの頃にいろいろなスポーツを経験し、専門の競技を始めた時期が遅く、最初の伸びもゆっくりだったことがわかりました。

一方で、ジュニア期に成績が良い選手は、専門の競技を早く始め、その競技の練習量が多い傾向がありました。つまり、早く専門化すると子どもの頃は勝ちやすいものの、大人になってからの伸びにはつながりにくい可能性があるということです。小学生や中学生で勝っていた選手が、後から追い抜かれる現象とも一致します。

② 子どもの筋力トレーニングは、適切に行えば安全

「成長期の子どもに筋トレをさせると、身長が伸びなくなる」と心配される方も多いですが、国際的な専門団体による共同声明では、適切な指導のもとで行う筋力トレーニングは、子どもにとって安全で、健康やスポーツのパフォーマンスにも役立つとされています。指導している中でも、筋トレで身長が伸びなくなると感じたことはありません。子どもの筋トレについては、小学生・中学生が筋トレするっていいことなの?でも詳しく解説しています。

ポイント
  • 自転車だけを続けると、持久力と平衡性以外の体力は伸びにくい
  • 世界トップの選手ほど、子どもの頃にいろいろなスポーツを経験していた
  • 子どもの筋力トレーニングは、正しく行えば安全で効果的

小さい頃から自転車競技を始めるメリット

とはいえ、小さい頃から自転車競技を始めることに、メリットがないわけではありません。指導している中で、大きなメリットは2つあると考えています。

① バイクコントロール

バイクをうまく操る能力には、小さい頃に乗り込んで得られる独特の感覚があります。大人になると恐怖心からブレーキをかけてしまい、バイクコントロールの限界を引き出すことができません。恐怖を感じる前の子どもの頃に、思い切って攻めて得た感覚が、バイクコントロールという武器になります。

② 回転力

ジュニアの公式戦では、ギア比に制限があります。その中で速度を出すには、ペダルを回し続けなければなりません。回転力で速度を上げ、維持し続ける能力は、小さい頃から続けている選手に備わる能力で、大人になってから始めた選手には身につけにくいものです。

ただし、ジュニアの頃にギア比を制限せずに練習していたり、ギア比の制限がなくなった後にトルクをかけることにこだわりすぎたりすると、この能力は失われてしまいます。学年が上がってギア比が解放されていく中でも、3本ローラーなどを使って、回転させ続ける練習を続けましょう。

ジュニア選手が取り組みたいこと

小さい頃から自転車競技を続けるメリットを生かしながら、後から伸び悩まないために、次のことに取り組みましょう。

  • 外でたくさん遊ぶ:特に中学生以下は、自転車以外の運動や外遊びで、いろいろな動きを経験する
  • ほかのスポーツも経験する:筋力・瞬発力・敏捷性・協応性などを、楽しみながら伸ばす
  • 筋トレ(ストレングス&コンディショニング)を取り入れる:正しいフォームで、段階的に負荷を上げる
  • 回転力を保つ:ギア比が解放されても、ペダルを回し続ける練習を続ける

スキルと体力の関係については、練習とトレーニングの違いでも詳しく解説しています。本当に好きなら、負けたくないなら、自分が苦手な分野にも向き合って、続けて取り組んでいきましょう。

よくある質問

Q. 子どもは小さい頃から自転車競技だけに絞ったほうがいいですか?

おすすめしません。世界トップレベルの選手を調べた研究では、子どもの頃にいろいろなスポーツを経験し、専門の競技は比較的遅く始めた選手のほうが多いと報告されています。小学生・中学生のうちは、自転車以外の運動や外遊びも大切にしましょう。

Q. 小さい頃から自転車競技を始めるメリットはありますか?

あります。特に「バイクコントロール」と「ペダルを回す力(回転力)」は、小さい頃から乗り込んでいる選手が身につけやすい能力です。こうした強みを生かしながら、ほかの体力もバランスよく伸ばすことが大切です。

Q. 後から始めた選手に追い抜かれるのはなぜですか?

自転車競技を続けると持久力やバランス能力は高まりますが、筋力・瞬発力・敏捷性・柔軟性などは伸びにくく、むしろ落ちていくことがあります。ほかのスポーツから転向してきた選手は、こうした基礎的な体力が高いため、後からでも追い抜いていくことがあります。

Q. 成長期の子どもが筋トレをすると、身長が伸びなくなりますか?

適切な指導のもとで行う筋力トレーニングが、子どもの成長を妨げるという根拠はないとされています。国際的な専門団体の共同声明でも、正しいフォームと段階的な負荷で行う筋力トレーニングは、子どもにとって安全で有益だとされています。

まとめ

小さい頃から自転車競技を始めるメリットと注意点のまとめ
  • 小さい頃から始めると、バイクコントロールと回転力が身につきやすい
  • 自転車だけを続けると、持久力と平衡性以外の体力が伸びにくく、後から追い抜かれることがある
  • 研究では、世界トップの選手ほど子どもの頃にいろいろなスポーツを経験していた
  • 外遊び・ほかのスポーツ・筋トレで、基礎体力をバランスよく伸ばす

ジュニア期は、目先の勝ち負けだけでなく、大人になってからも伸び続けられる土台をつくる時期です。自転車の楽しさを大切にしながら、いろいろな運動を経験させてあげてください。

NAGOYA・GIFU | 小学生〜高校生

RIDE, LEARN,
AND RACE.

名古屋本校・星が丘・岐阜羽島の3拠点で、小学生から高校生までのロードバイク指導を行っています。安全な乗り方と基礎体力づくりから、レースで戦う力まで、段階的に育てます。見学・体験はお気軽にどうぞ。

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参考文献
  • Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. What makes a champion? Early multidisciplinary practice, not early specialization, predicts world-class performance. Perspect Psychol Sci. 2022;17(1):6-29. doi:10.1177/1745691620974772
  • Lloyd RS, Faigenbaum AD, Stone MH, et al. Position statement on youth resistance training: the 2014 International Consensus. Br J Sports Med. 2014;48(7):498-505. doi:10.1136/bjsports-2013-092952
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この記事を書いた人

伊藤 透のアバター 伊藤 透 ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ

ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ。日本スポーツ協会公認 自転車コーチ レベル3、健康運動指導士・健康運動実践指導者、NSCA認定パーソナルトレーナー。指導歴約16年。

ジュニアからトップ選手まで指導し、全日本自転車競技選手権大会ロードレース優勝、全日本学生選手権個人ロードレース大会優勝などの指導実績があります。

名古屋・久屋大通で、動作評価とidmatchクリートフィッティングによるロードバイクフィッティングを行い、膝や腰の痛みの改善とパフォーマンス向上をサポートしています。

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