ヒルクライムで腰が痛くなる理由と対策|登りで腰痛が起きる仕組みを論文で解説

ヒルクライムで腰が痛くなる理由と対策

こんにちは。

名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。

おるか君

平地では大丈夫なのに、ヒルクライムになると腰が痛くなります。

なぜ登りだけ痛くなるんですか?

ヒルクライムで腰が痛くなるのは、踏む力が大きい状態で、同じ前傾姿勢を長時間続けるためです。軽いギアでケイデンスを保ち、ハンドルとサドルを見直して、体幹とお尻を使って登ると改善しやすくなります。

この記事では、ヒルクライム(登り)でなぜ腰が痛くなるのかを、研究データをもとに解説します。

この記事は、登りで腰が痛くなる・違和感がある方を対象にしています。脚のしびれや力の入りにくさ、安静にしていても痛む場合は、まず整形外科を受診してください。腰痛全体の原因と対策は「ロードバイクで腰が痛い5つの原因と改善方法」で解説しています。

目次

ヒルクライムで腰が痛くなる人は多い?

ヒルクライム時の腰痛改善のためにフィッティングを受けるサイクリストの乗車姿勢

腰痛はサイクリストに最も多い悩みのひとつです。プロのロードレース選手109名の調査では、過去12ヶ月に58%が腰痛を経験していました(Clarsen, 2010)。

ORCAで腰痛の改善を目的にフィッティングを受けた5名のうち、3名は「登りで腰が痛くなる」ことが主な悩みでした(T様、M・S様、T・M様)。ヒルクライムは、腰痛が表に出やすい場面と言えます。

なお、ヒルクライム中の腰痛だけを直接調べた研究はまだ多くありません。ここからは、登りでのペダリングの研究と、腰痛のあるサイクリストの研究を組み合わせて、なぜ痛くなるのかを整理します。

登りで体に何が起きているのか

① ペダルを踏む力(トルク)が大きくなる

登りでは、平地と同じパワーを出していてもケイデンスが下がり、1回ごとの踏み込みが重くなります。実走で計測した研究では、9.25%の登りを60rpmで走ったときのピークトルクは、平地を100rpmで走ったときより42%大きくなりました。同じパワー・同じ80rpmでも、登りではクランク角45度付近のトルクが約26%高い傾向がありました(Bertucci, 2005)。

8%の登りを座って走った研究でも、ケイデンスが下がるぶんピークトルクが高くなり、つま先が上を向くようにペダルの角度が変わっていました(Caldwell, 1998)。重い踏み込みを受け止めるために、骨盤と体幹は平地より強く支え続ける必要があります。

② 座ったままなら、筋肉の使い方は大きく変わらない

意外なことに、傾斜を0%から8%にしても、座ったまま同じパワーで漕ぐ限り、脚の筋肉の使い方(筋活動のパターン)は大きく変わりませんでした(Li & Caldwell, 1998)。4〜10%の傾斜で比べた研究でも、筋活動に大きく影響したのは傾斜より姿勢(座る・立つ)でした(Duc, 2008)。

つまり、ヒルクライムで腰が痛くなるのは「登りは特別な動き」だからではなく、重い踏み込みと同じ姿勢が、長い時間続くことが主な理由だと考えられます。

③ 長く続くほど背中が丸まり、背筋が頑張り続ける

1時間のライドでは、誰でも時間とともに背中の筋肉の働きが落ち、体幹が丸まっていきます(Marineau Belanger, 2022)。腰痛のあるサイクリストは、乗車中に腰の下部が大きく曲がった姿勢のまま痛みが強くなり(Van Hoof, 2012)、腰が丸まってねじれる動きと、背骨を安定させる多裂筋の働きの低下も報告されています(Burnett, 2004)。

さらに、腰痛の経験があるサイクリストは、FTPの100%まで強度を上げたときに腰の背筋の活動が痛みのない人より高く、使われ方も偏っていました(Sampieri, 2024)。ヒルクライムのように高い強度が長く続く場面は、まさにこの状態です。

ヒルクライムで腰痛を起こす5つの原因

原因起こりやすい状態チェックのサイン
① 重いギア・低いケイデンスギアが足りず、60rpm前後で踏み続ける登りの後半に腰が重くなる、太もも前がすぐ疲れる
② 骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まるサドルの上で骨盤が立ちすぎ、背中の途中から大きく曲がる横から撮ると背中が丸い、お尻と太もも裏が使えていない感覚
③ 体幹・背筋の持久力不足長い登りの後半ほど姿勢が崩れる時間がたつほど腰が落ちる、上半身が揺れる
④ ポジションが合っていないハンドルが低い・遠い、サドルが低い・前すぎる、サドル先端が上向き乗り始めから前傾がつらい、サドルの上で座り直すことが多い
⑤ 左右差・骨盤の傾き片脚で踏むたびに骨盤が傾く右だけ・左だけ腰が痛い、後ろから見て骨盤が揺れる

原因① 重いギア・低いケイデンス

前述のとおり、ケイデンスが下がるほど1回ごとのトルクは大きくなります(Bertucci, 2005)。ギアが足りずに低いケイデンスで踏み続けると、体幹は重い踏み込みを支え続けることになります。

原因② 骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まる

ORCAの事例でも、ヒルクライムで腰痛があった方はサドルの上で骨盤が後ろに倒れ、背中の途中から大きく丸まった姿勢で乗っており、お尻と太もも裏ではなく太もも前側に頼った踏み方になっていました(T・M様の事例)。

原因③ 体幹・背筋の持久力不足

腰痛のあるサイクリストは、お腹の深い筋肉(腹横筋)と背骨の深い筋肉(多裂筋)が薄く、背筋の持久力が低い傾向がありました(Rostami, 2015)。長い登りの後半に姿勢が崩れる方は、持久力の不足が考えられます。

原因④ ポジションが合っていない

登坂を想定してペダリングと骨盤の動きを確認するフィッティングの様子

ハンドルが低く遠いほど、腰の曲がりは大きくなります(Muyor, 2015)。サドルの先端が上を向いていると骨盤と背骨が反りすぎ、角度を少し前下がりにしたところ70%以上の人で腰痛が大きく改善したという報告もあります(Salai, 1999)。ORCAの事例では、サドルが低く前すぎ、ブラケットが低いことが登りでの腰痛につながっていたケースもありました(M・S様の事例)。

原因⑤ 左右差・骨盤の傾き

登りで片側の腰だけが痛む場合は、踏み込むたびに骨盤が左右に傾いている可能性があります。ORCAの事例でも、登坂時の右腰の痛みには、左脚の上死点で骨盤が大きく傾く動きが関係していました(M・S様の事例)。

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ダンシング(立ちこぎ)は腰に良い?

ダンシングは、座りっぱなしの姿勢をリセットできるため、ときどき入れると腰が楽になることがあります。一方で、立ちこぎではお尻や太ももの筋肉に加えて、背筋(脊柱起立筋)と腹筋の活動がむしろ大きくなることがわかっています(Duc, 2008/Li & Caldwell, 1998)。サドルという支えがなくなるため、骨盤を体幹で支える必要があるからです。

また、座った状態と立った状態のどちらが有利かは強度によって変わり、最大酸素摂取量に相当するパワーの約94%を超えるような高い強度では、立ったほうが長く続けられました(Hansen & Waldeland, 2008)。腰痛対策としては、長くダンシングを続けるより、姿勢を変えるために短く挟む使い方がおすすめです。

原因がポジションかどうか、自分では判断しにくい方へ

ORCAのバイクフィッティングでは、ペダリングの動きを見ながら、サドル・ハンドル・クリートをまとめて調整します。

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自分でできるセルフチェック

セルフチェック
  1. 登りのケイデンスを確認する:長い登りで60rpm前後まで落ちていないか。
  2. 横から撮影する:登りの姿勢で、背中が大きく丸まっていないか、骨盤が後ろに倒れていないか。
  3. 後ろから撮影する:踏み込むたびに骨盤が左右に揺れていないか。
  4. いつ痛むかを記録する:登り始めか後半か、座っているときか立っているときか、右か左か。

ヒルクライムの腰痛対策

軽いギアでケイデンスを保つ

同じパワーでも、ケイデンスが高いほど1回ごとのトルクは小さくなります。長い登りでは、ケイデンスを保てる軽いギア(スプロケットの大きいギアやコンパクトクランク)を用意するのがおすすめです。

ハンドル・サドルを見直す

登りで腰がつらい場合は、ハンドルを少し高く・近くし、サドルの高さ・前後位置・角度を確認しましょう。サドル高さの目安は「サドル高さの記事」で解説しています。

体幹とお尻・太もも裏を鍛える

体幹の持久力と、お尻・太もも裏で骨盤を支える力をつけることが、登りで姿勢を崩さないための土台になります。市民サイクリストの調査では、ペダリングの練習をしている人や、コーチの指導・計画的なトレーニングを受けている人は腰痛が少ない傾向がありました(Battista, 2021)。トレーニングを専門家の指導で行いたい方は、持久系スポーツ専門のパーソナルトレーニング(ORCA PERSONAL GYM)もご活用ください。

ダンシングを短く挟む

座りっぱなしにならないよう、斜度が上がる場所やカーブの立ち上がりなどで、短くダンシングを挟んで姿勢を変えましょう。

ORCAのフィッティング事例(ヒルクライムの腰痛)

事例悩み主な所見行った調整・指導
T様2km以上の登りや100km以上で腰痛上死点で右膝が開き骨盤がずれる、太もも裏の左右差クリートを前へ、サドルを前・上へ、太もも裏とお尻のコンディショニング
M・S様(20代)登りで右の腰、左股関節の詰まり骨盤の左右の傾き、太もも裏の筋力不足、足首の硬さ、サドルが低く前すぎ、ブラケットが低い自重エクササイズ、クリートとサドルの調整、ブラケットを起こす
T・M様(40代)ヒルクライムで腰(翌日まで続く)骨盤が後ろに倒れ背中が大きく丸まる、太もも前側に頼るペダリングヒップヒンジと昇降運動で股関節を使う感覚づくり、クリート・サドル・ブラケットの設定

※ 事例は個人の結果であり、同じ効果を保証するものではありません。

医療機関を受診する目安

こんな症状があれば受診を
  • 脚のしびれ、脚に力が入りにくい
  • 安静にしていても痛む、夜に痛む
  • 発熱をともなう、排尿・排便の異常がある
  • 転倒やケガのあとから痛む
  • 自転車を降りても痛みが続き、休んでも改善しない

まとめ

ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

ヒルクライムで腰が痛くなるのは、登りではペダルを踏む力(トルク)が大きくなり、ケイデンスが落ちた状態で、同じ前傾姿勢を長時間保ち続けるためです。研究では、坂の傾斜そのものより、踏む力と姿勢の持続が筋肉の負担を左右することがわかっています。腰痛のあるサイクリストは、強度が上がると背筋が過剰に働く傾向もあります。対策は、軽いギアでケイデンスを保つ、ハンドルとサドルを見直す、体幹とお尻・太もも裏で骨盤を支える力をつける、ダンシングを短く挟むことです。

ヒルクライムの腰痛は、ギア・ポジション・体の使い方が重なって起こることがほとんどです。自分で見直しても改善しない場合は、ORCAのフィッティングで、登りでの動きを確認しながら原因を探ってみてください。

この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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参考文献
  • Clarsen B, Krosshaug T, Bahr R. Overuse injuries in professional road cyclists. Am J Sports Med. 2010;38(12):2494-501. doi:10.1177/0363546510376816
  • Bertucci W, Grappe F, Girard A, Betik A, Rouillon JD. Effects on the crank torque profile when changing pedalling cadence in level ground and uphill road cycling. J Biomech. 2005;38(5):1003-10. doi:10.1016/j.jbiomech.2004.05.037
  • Caldwell GE, Li L, McCole SD, Hagberg JM. Pedal and crank kinetics in uphill cycling. J Appl Biomech. 1998;14(3):245-259. doi:10.1123/jab.14.3.245
  • Li L, Caldwell GE. Muscle coordination in cycling: effect of surface incline and posture. J Appl Physiol. 1998;85(3):927-34. doi:10.1152/jappl.1998.85.3.927
  • Duc S, Bertucci W, Pernin JN, Grappe F. Muscular activity during uphill cycling: effect of slope, posture, hand grip position and constrained bicycle lateral sways. J Electromyogr Kinesiol. 2008;18(1):116-27. doi:10.1016/j.jelekin.2006.09.007
  • Hansen EA, Waldeland H. Seated versus standing position for maximization of performance during intense uphill cycling. J Sports Sci. 2008;26(9):977-84. doi:10.1080/02640410801910277
  • Marineau Belanger E, et al. The effect of low back pain on neuromuscular control in cyclists. J Sports Sci. 2022;40(11):1255-1264. doi:10.1080/02640414.2022.2061819
  • Van Hoof W, et al. Comparing lower lumbar kinematics in cyclists with low back pain (flexion pattern) versus asymptomatic controls. Man Ther. 2012;17(4):312-7. doi:10.1016/j.math.2012.02.012
  • Burnett AF, et al. Spinal kinematics and trunk muscle activity in cyclists: a comparison between healthy controls and non-specific chronic low back pain subjects. Man Ther. 2004;9(4):211-9. doi:10.1016/j.math.2004.06.002
  • Sampieri A, et al. Alterations in magnitude and spatial distribution of erector spinae muscle activity in cyclists with a recent history of low back pain. Eur J Appl Physiol. 2025;125(4):967-976. doi:10.1007/s00421-024-05628-7
  • Rostami M, et al. Ultrasound assessment of trunk muscles and back flexibility, strength and endurance in off-road cyclists with and without low back pain. J Back Musculoskelet Rehabil. 2015;28(4):635-44. doi:10.3233/BMR-140559
  • Muyor JM. The influence of handlebar-hands position on spinal posture in professional cyclists. J Back Musculoskelet Rehabil. 2015;28(1):167-72. doi:10.3233/BMR-140506
  • Salai M, et al. Effect of changing the saddle angle on the incidence of low back pain in recreational bicyclists. Br J Sports Med. 1999;33(6):398-400. doi:10.1136/bjsm.33.6.398
  • Battista S, Sansone LG, Testa M. Prevalence, characteristics, association factors of and management strategies for low back pain among Italian amateur cyclists. Sports Med Open. 2021;7(1):78. doi:10.1186/s40798-021-00370-2

よくある質問

Q. ヒルクライムだけ腰が痛くなるのはなぜですか?

登りではペダルを踏む力が大きくなり、ケイデンスが下がった状態で長く座り続けるため、骨盤を支える体幹や背筋の負担が平地より大きくなります。腰痛のあるサイクリストは、強度が上がると背筋の活動が高まりやすいことも報告されています。

Q. ダンシング(立ちこぎ)をすれば腰は楽になりますか?

座りっぱなしの姿勢をリセットできるので、ときどき入れると楽になることがあります。ただし、立ちこぎでは背筋や腹筋の活動がむしろ増えるため、長く続けるより「姿勢を変えるために短く入れる」使い方がおすすめです。

Q. ギアを軽くすると腰痛は減りますか?

同じパワーでもケイデンスが低いほどペダルにかかる力(トルク)は大きくなります。軽いギアでケイデンスを保つと、1回ごとの踏み込みが小さくなり、体幹への負担を抑えやすくなります。

Q. 登りで腰が痛いときはハンドルを上げたほうがいいですか?

ハンドルが低い・遠いと腰が大きく丸まり、負担が増えやすくなります。登りで腰がつらい場合は、ハンドルを少し高く・近くすることで楽になることがあります。

Q. 腰痛予防にはどんなトレーニングがおすすめですか?

体幹(腹横筋・多裂筋)の持久力と、お尻・太もも裏を使って骨盤を支える力をつけるトレーニングがおすすめです。ヒップヒンジやプランク、ブルガリアンスクワットなどを取り入れましょう。

Q. どんな症状なら病院を受診すべきですか?

脚のしびれや力の入りにくさ、安静時や夜間の痛み、発熱、排尿・排便の異常、転倒後の痛みがある場合は、自転車の調整より先に整形外科を受診してください。

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この記事を書いた人

伊藤 透のアバター 伊藤 透 ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ

ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ。日本スポーツ協会公認 自転車コーチ レベル3、健康運動指導士・健康運動実践指導者、NSCA認定パーソナルトレーナー。指導歴約16年。

ジュニアからトップ選手まで指導し、全日本自転車競技選手権大会ロードレース優勝、全日本学生選手権個人ロードレース大会優勝などの指導実績があります。

名古屋・久屋大通で、動作評価とidmatchクリートフィッティングによるロードバイクフィッティングを行い、膝や腰の痛みの改善とパフォーマンス向上をサポートしています。

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