こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。
おるか君ヒルクライムの大会に出ていますが、なかなかタイムが縮みません。
仕事もあるので、平日はあまり乗れません。どんな練習をすればいいですか?
ヒルクライムの速さは、体重あたりのパワー(W/kg)でほぼ決まります。速くなるには、FTP(長く維持できるパワー)を上げる練習を中心に、筋トレと体重管理、ペース配分を組み合わせることが大切です。
この記事では、ヒルクライムの速さを決める要素、速くなる練習メニュー、ケイデンスとダンシングの使い分け、筋トレの効果、社会人向けの1週間メニューを解説します。
ヒルクライムの速さを決める要素
体重あたりのパワー(W/kg)が最も大事
プロ選手を分析した研究では、登りの能力は体重あたりのパワー(W/kg)で評価するのが最も適していると報告されています。一方、平地では体重の影響が小さくなります[1][2]。
登りでは速度が低いぶん空気抵抗の影響が小さくなり、体とバイクを持ち上げる力(重力)の影響が大きくなります。そのため、同じパワーなら体重が軽いほど速く登れます。
FTP(長く維持できるパワー)
長い登りでは、乳酸がたまり始める強度のパワー(FTPに近い考え方)が、成績を左右するとされています[1]。30分〜1時間以上続くヒルクライムでは、短い時間の最大パワーよりも、長く出し続けられるパワーが大切です。
ペース配分
どれだけパワーがあっても、序盤に上げすぎると後半に大きく失速します。持っている力を出し切るには、ペース配分も重要な要素です。


ヒルクライムが速くなる練習メニュー
スイートスポット・閾値の登坂練習
FTPの88〜105%程度の強度で、8〜20分の登りを2〜3本くり返します。FTPを引き上げる中心となる練習で、本番に近い強度なのでペース感覚も身につきます。くわしくはSST(スイートスポットトレーニング)とは?をご覧ください。
VO2maxのヒルリピート
FTPの106〜120%程度の強度で、3〜5分の登りを4〜6本くり返します。VO2max(体が取り込める酸素の最大量)を高め、FTPの「天井」を引き上げます。インターバルの組み方は、パワーメーターを使ったインターバルトレーニングで解説しています。
低ケイデンス(トルク)練習は補助的に
低いケイデンス(60〜70回転)で高強度のインターバルを行うと、高いケイデンスよりもパフォーマンスが伸びた「可能性が高い」という研究があります[3]。一方で、低ケイデンスの練習をまとめたレビューでは、はっきりした効果の根拠はなく、取り入れるとしても控えめに、という結論でした[4]。必須の練習ではなく、補助的に取り入れる程度がよいでしょう。
ケイデンスは「軽めのギアで回す」
勾配10%の登りで、84回転と41回転を比べた研究では、84回転のほうが心拍数や酸素の消費量が少なく、効率よく登れていました[5]。重いギアで踏み込みすぎず、軽めのギアで回すことを意識しましょう。
シッティングとダンシングの使い分け
勾配10%の登りで比べた研究では、最大有酸素パワーの86%程度の強度では、座って漕いでも立って漕いでも、続けられる時間に差はありませんでした。それより高い強度(約94%以上)では、立って漕ぐ(ダンシング)ほうが有利でした[6]。
また、勾配4%のゆるい登りでは、ダンシングのほうが酸素の消費や心拍数が多く、効率が悪くなりました。勾配10%では差がなく、脚のきつさはダンシングのほうが小さく感じられていました[7]。
- 基本は座って(シッティング)、軽めのギアで回す
- 急な坂やペースを上げたい場面では、ダンシングを使う
- ゆるい登りでのダンシングは、エネルギーを使いすぎる
AFTER WORK CLASS
名古屋で、仕事帰りにコーチと一緒に練習しませんか
ORCA CYCLING SCHOOLの大人クラスでは、月曜は筋力トレーニング、火・水曜はローラー練習を1回90分で行っています(星が丘校・名古屋本校)。初心者から上級者まで、1回4,400円から参加できます。
大人クラスを見る →社会人向けの1週間メニュー例
平日は時間が限られる社会人でも、ローラー台を使えば、短い時間で質の高い練習ができます。
| 曜日 | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 月 | 筋トレ(スクワット・レッグプレスなど、3セット×4〜10回) | 45〜60分 |
| 火 | ローラー:スイートスポット 2×15分 | 60分 |
| 水 | ローラー:VO2max 4〜5×4分 | 60分 |
| 木 | 休養、または軽く30分 | — |
| 金 | 休養 | — |
| 土 | 実走ヒルクライム:閾値で登坂2〜3本 | 2〜3時間 |
| 日 | 低強度で長めに走る(余裕があれば軽いダンシング練習) | 2〜4時間 |
疲れがたまっている週は、水曜日のVO2maxを低強度に切り替えるなど、無理をしないことが大切です。
筋トレでヒルクライムは速くなる?
鍛えたサイクリストが、週2回・12週間、高重量の筋トレ(4種目×3セット×4〜10回)を行った研究では、太ももの筋肉が増え、40分間の全力走の平均パワーも向上しました。しかも、体重は増えていませんでした[8]。
シーズン中は週1回の筋トレで、その効果を保てたという報告もあります[9]。女性のサイクリストでも、40分間の全力走のパワーや、ペダリングの効率が改善しています[10]。
筋トレの考え方は、サイクリスト・トライアスリートが筋トレをする理由で詳しく解説しています。
パワーを落とさない体重管理
登りの速さは体重あたりのパワーで決まるため[1]、体重を落とすことも効果的です。ただし、食事を極端に減らして筋肉まで落としてしまうと、パワーも下がってしまいます。
パワーを維持しながら減量する進め方は、ロードバイクでパワーを落とさずに減量する方法をご覧ください。
本番で効くテクニック
ペース配分
平均パワーが同じでも、勾配がきつい区間でやや強く、ゆるい区間でやや弱く踏むと、タイムが縮むという計算モデルの研究があります[11]。ヒルクライムでは、「勾配がきつい区間で少し上げ、ゆるい区間で戻す」ことを意識しましょう。ただし、序盤に上げすぎないことが最優先です。
ギアの選び方
急な坂に備えて、軽いギアを残しておくことが大切です。ケイデンスが極端に落ちるような重いギアは、脚の疲労を早めます[5]。
富士ヒルを目指す方は、富士ヒル 目標タイム別のペースと練習方法もあわせてご覧ください。
回復と疲労の管理
- 高強度の練習を2日続けない
- 睡眠時間を確保する
- 練習の後は、炭水化物とたんぱく質を補給する
- 疲れが抜けないときは、思い切って休む
よくある質問
Q. ヒルクライム初心者は、まず何から始めればいいですか?
まずは低強度で走る量を確保して、有酸素の土台をつくりましょう。そのうえで、週1回、登りでスイートスポットの強度の練習から始めるのがおすすめです。パワーメーターがあれば、FTPを測っておくと強度の目安がわかります。
Q. 体重を落とすのと、パワーを上げるのは、どちらを優先すべきですか?
登りの速さは体重あたりのパワーで決まるので、どちらも効果があります。ただし、筋肉を落とすような極端な減量はパワーも下げてしまうので、パワーを維持しながら少しずつ落としましょう。
Q. ローラー台だけでも、ヒルクライムは速くなりますか?
パワー(W/kg)を上げる練習は、ローラー台で十分にできます。ダンシングの感覚やペース配分は、週末の実走で補いましょう。
Q. 筋トレをすると、脚が太く重くなりませんか?
研究では、筋トレで太ももの筋肉は増えても、体重は増えず、登りに関係する持久力のパフォーマンスが改善しました。種目と回数を選べば、重くなる心配はほとんどありません。
Q. 登りは、重いギアと軽いギアのどちらがいいですか?
研究では、高めのケイデンスのほうが、同じ登りでも心拍数や酸素の消費が少なく、効率的でした。急な坂に備えて、軽いギアを残しておきましょう。
まとめ
- ヒルクライムの速さは、体重あたりのパワー(W/kg)でほぼ決まる
- スイートスポット・閾値の登坂練習でFTPを上げ、VO2maxの練習で天井を上げる
- 基本は座って軽めのギアで回し、急な坂ではダンシングを使う
- 高重量の筋トレは、体重を増やさずにパフォーマンスを高めた
- 減量は筋肉を落とさない範囲で
- 序盤に上げすぎず、勾配に合わせて少しだけパワーを調整する
ORCA CYCLING SCHOOLでは、パワーデータをもとにしたオンラインコーチングで、一人ひとりの目標に合わせた練習メニューをつくっています。ヒルクライムで目標タイムを達成したい方は、お気軽にご相談ください。
- Padilla S, Mujika I, Cuesta G, Goiriena JJ. Level ground and uphill cycling ability in professional road cycling. Med Sci Sports Exerc. 1999. doi:10.1097/00005768-199906000-00017
- Mujika I, Padilla S. Physiological and performance characteristics of male professional road cyclists. Sports Med. 2001. doi:10.2165/00007256-200131070-00003
- Paton CD, Hopkins WG, Cook C. Effects of low- vs. high-cadence interval training on cycling performance. J Strength Cond Res. 2009. doi:10.1519/JSC.0b013e3181b3f1d3
- Hansen EA, Rønnestad BR. Effects of Cycling Training at Imposed Low Cadences: A Systematic Review. Int J Sports Physiol Perform. 2017. doi:10.1123/ijspp.2016-0574
- Swain DP, Wilcox JP. Effect of cadence on the economy of uphill cycling. Med Sci Sports Exerc. 1992;24(10):1123-1127. PMID: 1435159
- Hansen EA, Waldeland H. Seated versus standing position for maximization of performance during intense uphill cycling. J Sports Sci. 2008. doi:10.1080/02640410801910277
- Tanaka H, Bassett DR, Best SK, Baker KR. Seated versus standing cycling in competitive road cyclists: uphill climbing and maximal oxygen uptake. Can J Appl Physiol. 1996. doi:10.1139/h96-013
- Rønnestad BR, Hansen EA, Raastad T. Effect of heavy strength training on thigh muscle cross-sectional area, performance determinants, and performance in well-trained cyclists. Eur J Appl Physiol. 2010;108:965-975. doi:10.1007/s00421-009-1307-z
- Rønnestad BR, Hansen EA, Raastad T. In-season strength maintenance training increases well-trained cyclists’ performance. Eur J Appl Physiol. 2010. doi:10.1007/s00421-010-1622-4
- Vikmoen O, et al. Strength training improves cycling performance, fractional utilization of VO2max and cycling economy in female cyclists. Scand J Med Sci Sports. 2016;26(4):384-396. doi:10.1111/sms.12468
- Swain DP. A model for optimizing cycling performance by varying power on hills and in wind. Med Sci Sports Exerc. 1997. doi:10.1097/00005768-199708000-00017








