トライアスロン・TTのバイクポジションの作り方|DHポジションは低いほど速い?空気抵抗・パワー・ランへの影響を論文で解説

トライアスロン・TTのバイクポジションの作り方

こんにちは。

名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。

おるか君

トライアスロンのためにDHバーを付けました。

上体はできるだけ低くしたほうが速くなりますか?

TT・トライアスロンのポジションは、「低ければ速い」ではなく「維持できる低さ」が正解です。パワーを保てる範囲で上体を下げ、サドルを前に出すと、バイク後のランにもつなげやすくなります。

この記事では、トライアスロン・TT(タイムトライアル)のバイクポジションの作り方を、空気抵抗・パワー・ランへの影響という3つの視点から、研究データをもとに解説します。

目次

TTポジションとロードポジションの違い

TT・トライアスロンのポジションは、空気抵抗を減らすために上体を低くし、DHバー(エアロバー)に肘を乗せて乗ります。ロードバイクの通常のポジションとは、次の点が大きく違います。

項目ロードポジションTT・トライアスロンポジション
サドルの前後BB(クランク軸)よりやや後ろ前に出す(シート角を立てる)
上体の角度40〜50度前後低くする(体格と柔軟性しだい)
腕ブラケットを握る肘をパッドに乗せる
重心サドルとハンドルに分散前寄り
目的操作性・快適性空気抵抗の削減、ランへの影響を減らす

ロードバイクにクリップオンのDHバーを付けるだけだと、サドルが後ろのまま上体だけが低くなり、股関節が深く曲がって詰まる、前に座りすぎてお尻が痛いといった問題が起こりやすくなります。股関節の詰まりについては「ロードバイクで股関節が痛い原因と対策」で解説しています。

上体は低いほど速い?研究でわかったこと

低くするほどパワーと効率は下がる

よくトレーニングされた男性サイクリスト19人を対象に、上体の角度を0度(水平)〜24度で変えて比べた研究では、上体が低いほど最大パワーが下がり、同じ強度でも酸素摂取量や呼吸数が増えて効率が下がりました。特に上体を水平(0度)にしたときの影響が大きく、研究者は空気抵抗と体の働きのバランスを取る必要があると結論づけています(Fintelman et al., 2015)。

同じグループの別の研究では、上体を低くするとお尻の筋肉(大臀筋)が働き始めるタイミングが遅れ、ペダルを踏む力のピークが前にずれることも確認されています。ただし最大有酸素パワーの70%程度の強度では、空気抵抗が減るメリットがデメリットを上回ると考えられています(Fintelman et al., 2016)。

最適な角度は「速度」で決まる

これらのデータから最適な上体の角度を計算した研究では、速度が速いほど上体を低くしたほうが有利になり、時速46km以上では空気抵抗による損失がパワーの低下を上回ると試算されました。一方で、完全に水平な上体は最適ではなく、時速30km未満ではやや起こしたTTポジションのほうが有利という結果でした(Fintelman et al., 2014)。

平均速度の目安おすすめの考え方
時速30km未満上体はやや高め。パワーと快適性を優先
時速30〜40km無理なく維持できる範囲で低く
時速40km以上空気抵抗の削減を優先。ただし水平まで下げない

サドルを前に出すとランが速くなる

トライアスロンでは、バイクのあとにランが待っています。男性トライアスリート8人が、シート角73度(ロードバイクに近い)と81度(サドルを前に出したTT寄り)で40kmを走ったあとに10kmランを行った研究では、81度のほうが10kmランが42分55秒と、73度の46分15秒より約3分20秒速くなりました。差は特にランの前半5kmで大きく出ています(Garside & Doran, 2000)。

サドルを前に出すと、股関節の角度が開いた状態でペダルを回せるため、ランで使う筋肉への負担が残りにくいと考えられています。ただし、サドルを前に出したらサドルの高さも合わせて調整する必要があります。

原因がポジションかどうか、自分では判断しにくい方へ

ORCAのバイクフィッティングでは、ペダリングの動きを見ながら、サドル・ハンドル・クリートをまとめて調整します。

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DHポジションの作り方(5ステップ)

  1. サドルを前に出す:DHバーに乗ったとき、股関節が詰まらない位置まで前に出す
  2. サドルの高さを合わせ直す:前に出すと脚の伸び方が変わるため、膝の角度を確認して調整する(目安は「サドル高さの目安」)
  3. パッドの位置を決める:肘が肩の真下〜やや前に来て、上腕が床とほぼ垂直になる位置
  4. パッドの幅を決める:肩幅かやや狭く。狭すぎると呼吸が苦しく、ハンドル操作も不安定になる
  5. 実走で維持できるか確認する:本番の距離(オリンピックなら40km、ミドルなら90km前後)を、その姿勢のまま走れるかを試す

いきなり低いポジションにすると、首・腰・股関節に負担がかかります。少しずつ低くして、体を慣らしていくことが大切です。

TTポジションでよくある悩み

悩みよくある原因見直すこと
首が痛い上体が低すぎて首を大きく反らせている上体の高さ、目線の使い方
脚の付け根が詰まるサドルが後ろのまま上体だけ低くしているサドルを前に、高さを再調整
お尻・股の前が痛い前に座りすぎてサドルの先端に体重が乗るTT用サドル、サドルの角度
腰が痛い上体を低くするために背中を無理に丸めている上体の高さ、股関節の柔軟性
ランで脚が動かないバイクで太もも前を使いすぎているサドル前後、ペダリング

首の痛みは「ロードバイクで首・肩が痛い原因と対策」、腰の痛みは「ロードバイクで腰が痛い5つの原因と改善方法」もあわせてご覧ください。

ORCAのトライアスロンのフィッティング事例

ORCA CYCLING SCHOOLでも、トライアスロンのためのフィッティングを行っています。実際の調整内容は、次のレポートで紹介しています。

まとめ

ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

TT・トライアスロンのポジションは、「低ければ速い」ではなく「維持できる低さ」が正解です。上体を低くするほど空気抵抗は減りますが、研究では出せるパワーが下がり、同じ強度でも酸素の消費が増えることが示されています。最適な上体の角度は速度で変わり、平均時速30km未満ならやや起こした姿勢のほうが有利、時速46km以上で空気抵抗の影響が上回ると試算されています。また、サドルを前に出して(シート角を立てて)乗ると、その後の10kmランが約3分速くなったという研究もあります。

TT・トライアスロンのポジションは、空気抵抗・パワー・ランへの影響・体の柔軟性のバランスで決まります。ORCA CYCLING SCHOOLのフィッティングでは、ペダリング動作を確認しながら、あなたが本番の距離を維持できるエアロポジションを一緒に作ります。

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▶︎ フィッティングの種類や料金相場は「ロードバイクのフィッティングとは?」

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参考文献
  • Fintelman DM, Sterling M, Hemida H, Li FX. The effect of time trial cycling position on physiological and aerodynamic variables. J Sports Sci. 2015;33(16):1730-7. doi:10.1080/02640414.2015.1009936
  • Fintelman DM, Sterling M, Hemida H, Li FX. Effect of different aerodynamic time trial cycling positions on muscle activation and crank torque. Scand J Med Sci Sports. 2016;26(5):528-34. doi:10.1111/sms.12479
  • Fintelman DM, Sterling M, Hemida H, Li FX. Optimal cycling time trial position models: aerodynamics versus power output and metabolic energy. J Biomech. 2014;47(8):1894-8. doi:10.1016/j.jbiomech.2014.02.029
  • Garside I, Doran DA. Effects of bicycle frame ergonomics on triathlon 10-km running performance. J Sports Sci. 2000;18(10):825-33. doi:10.1080/026404100419883

よくある質問

Q. トライアスロンのポジションは上体を低くするほど速いですか?

低くするほど空気抵抗は減りますが、出せるパワーも下がり、効率も悪くなります。研究では、時速30km未満ではやや起こした姿勢のほうが有利で、完全に水平な上体は最適ではないと試算されています。本番の距離を維持できる低さを目指しましょう。

Q. ロードバイクにDHバーを付けるだけで大丈夫ですか?

付けるだけだとサドルが後ろのまま上体だけが低くなり、股関節が詰まったりお尻が痛くなったりしやすくなります。DHバーを付けたら、サドルを前に出して高さも合わせ直すことをおすすめします。

Q. サドルを前に出すとどんな効果がありますか?

股関節の角度が開いた状態でペダルを回せるため、ランへの影響を減らせると考えられています。シート角を73度から81度にした研究では、バイクのあとの10kmランが約3分20秒速くなりました。

Q. DHバーのパッドはどこに置けばいいですか?

肘が肩の真下〜やや前に来て、上腕が床とほぼ垂直になる位置が基本です。幅は肩幅かやや狭くします。狭すぎると呼吸が苦しくなり、ハンドル操作も不安定になります。

Q. TTポジションで首が痛くなるのはなぜですか?

上体が低いほど、前を見るために首を大きく反らせる必要があるためです。上体の高さを少し上げる、目線を眼球で調整するなどで負担を減らせます。

Q. 初心者でもTTポジションは必要ですか?

スプリントやオリンピックディスタンスでも、DHポジションを維持できれば空気抵抗を減らせます。ただし、まずは安全にハンドル操作ができること、本番の距離を快適に走れることを優先しましょう。

Q. フィッティングでトライアスロンのポジションは作れますか?

作れます。体の柔軟性や筋力を評価したうえで、サドルの前後・高さ、パッドの位置と幅を調整し、維持できるエアロポジションを一緒に探していきます。

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この記事を書いた人

伊藤 透のアバター 伊藤 透 ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ

ORCA CYCLING SCHOOL ヘッドコーチ。日本スポーツ協会公認 自転車コーチ レベル3、健康運動指導士・健康運動実践指導者、NSCA認定パーソナルトレーナー。指導歴約16年。

ジュニアからトップ選手まで指導し、全日本自転車競技選手権大会ロードレース優勝、全日本学生選手権個人ロードレース大会優勝などの指導実績があります。

名古屋・久屋大通で、動作評価とidmatchクリートフィッティングによるロードバイクフィッティングを行い、膝や腰の痛みの改善とパフォーマンス向上をサポートしています。

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