こんにちは。
ORCA CYCLING SCHOOL 講師の伊藤 ( @orca-school )です。
こちらのブログでは、ロードバイクのトレーニングについて解説しています。
ペダリングの左右差が気になります。
どうすればいいですか?
以上のような、ペダリングの左右差についてにお答えします。
・ ペダリング で使用される筋肉とは
・ ペダリング の左右差の意味
・ペダリング の左右差を考える
ペダリングで使用される筋肉
左右差について知る前に、ペダリングで使用される筋肉と関節を理解しましょう。どこの筋肉が使われるのか、わからない場合は以下の記事をご一読ください。
⚫︎ ペダリングで使用される関節
: 股関節・膝関節・足関節
⚫︎ ペダリングで使用される筋肉
: 大臀筋・ハムストリング・大腿四頭筋 など
左右差と速さ
ペダリングの左右差に関して、パフォーマンスとの関係性を問われることがあります。
左右均等でないと、速く走れませんかと聞かれることがありますが、結論から言うと ペダリングの左右差が速さに影響しているかどうかはわかりません。
※ 論文として研究されているものがなかったので、またあれば報告いたします。
ペダリングを踏み込む左右のパワーが均等であることに越したことはありませんが、左右均等だからといってパフォーマンス(速度)に関与しているかどうかは現段階では明確にされていません。
実際、ロードレースやトライアスロンのプロ選手を始め、様々な大会で結果を残している選手たちのパワーデータを観てみると、右52% : 左48% と左右で異なりますし、±2-3% 程度のがある選手が多いです。
パフォーマンスに対する左右差の考え方
水泳の自由形(クロール)を思い出してみましょう。
息継ぎ動作の時間を含めれば多少左右差を感じますが、息継ぎをしていないタイミングでも左右で水をかき分ける秒数がそれぞれ異なります。しかし、左右均等に、右50% : 左50% でクロールを行なっている選手が勝つのかと言えば、そうではないことも多いです。
上記のように、自転車以外の他種目を考えても、左右非対称で同一動作を繰り返す種目(ランニング/水泳など) において、パフォーマンス向上を目指すためのアプローチに左右差をなくすという選択は、何もない限りはあまり重要視しません。
ペダリングを考えるなら
パフォーマンス向上という観点でペダリングの左右差を考えるよりも、いかにペダリングでブレーキをかけないかに注力することをお勧めしています。SFR などのドリルを取り入れながら、綺麗なペダリングを心がけてみましょう。
⚫︎ バイクを速く進ませるためには
: 踏み脚が発揮しているパワー(アクセル)に対して、いかに引き脚が邪魔するパワー(ブレーキ)を減らすことができるかを考えましょう。
左右左と痛み
パフォーマンスと同様に、ペダリングの左右差に関して、体の痛み(主に膝)との関係性を問われることがあります。
左右均等でないと、膝や腰が痛くなることがありますかと質問されますが、結論から言うとペダリングの左右差が体の痛みに影響しているかどうかはわかりません。
※ 論文として研究されているものがなかったので、またあれば報告いたします。
パフォーマンス同様、ペダリングを踏み込む左右のパワーが均等であることに越したことはありませんが、左右均等でないからといって膝が痛くなるかどうかは現段階では明確にされていません。
痛みに対する左右差の考え方
ここまで話をすると左右対象でなくてもいいんだと思われる方もいますが、少し極端な例を出してみましょう。
左右バランスが 右58% : 左42% だった場合はどうでしょう。
データを見ていると、パフォーマンスで説明した例よりも振れ幅が大きく、左右差が ±2-3% を超えているケースは多数あります。左右差があってもパフォーマンス向上に大きな影響はないと考えていますが、パフォーマンスそのものに影響が出ることがあります。それが膝や腰の痛みです。
左右差の実際
左右バランスが 右58% : 左42% の場合は、右足の方が多く力を出しているということになりますが、1時間 – 2時間 とそのペダリングが続いたときに、先にどちらの足が疲れるかをイメージすると、おそらく右と答えられる方が多いでしょうし、実際にそうでした(指導感覚)。
そうした方の場合、疲労感だけでなく何らかの違和感(主に膝)を持っている方が多いです。
おそらく、使用された筋肉の一時的な炎症によるものだと考えられますが、こうした状態が改善されずに継続されると慢性的な症状に陥るケースがあると考えられますし、実際にそうだったんだろうなと思われるケースを見ることもあります。
ある程度の左右差が生まれると、不定愁訴やその先の怪我につながるケースが考えられるため、その差を抑える必要があると考えられます。ではどれくらいまで抑えれば良いのかという話ですが、論文でもあまりヒントになるものが出てこないので、指導経験にはなりますが ±2% 程度が問題があまり発生しない数値かなと感じています。
左右差が生まれる原因にもよりますが、怪我の影響などでなければ、関節 – 筋肉の酷使により痛みへとつながる可能性があります。
その場合は、左右差を抑えることを考える必要があります。次の項目を参考にしてみましょう。
左右差の原因と対処
ペダリングで左右差が発生する理由はさまざまありますが、自身の指導経験上、以下の3つの要因が多いと考えられます。
⚫︎ 左右差が発生する原因
: 筋力的な左右差
: 感覚的(コツ)な左右差
: ポジションが異なる左右差
それぞれの原因と対処方法をお伝えしたいと思います。
筋力的な左右差の場合
人間には利き手があるように、利き足があります。走り幅跳びやハードル走をおこなう際、どちらの足で踏み切って飛んでいましたか。大体の方にとって、踏み切る方が利き足だと考えられます。
この場合、動作を意識するだけでは解決できないことが多数あります。というのも純粋に発揮される筋力が異なるからです。
解決方法としては、ストレングストレーニング (筋トレ) で筋力を向上させることが最善方法だと考えられます。スクワットやルーマニアンデッドリフトなどの股関節を中心に動く両側性動作を高重量低回数で実施しつつ、補助としてリバースランジやブルガリアンスクワットなどの股関節を中心に動く片側性動作を取り入れることで、効率的かつ効果的に左右の筋力を可能な限り揃えることができると考えられます。
左右で感覚が異なる場合
右利きの人が、左手で綺麗に文字を書けるかと言われれば、そうではありません。それは、自身が脳内に保管している左右のコツ(感覚)が違うからです。
ロードバイクのペダリングを見る限り、左右均等に動いているように見えますが、実はそうでないということが多々あります。
解決策として、片足ペダリングなどや左右の動作をそれぞれ独立した中で感覚を作る必要もありますが、個人的にはピストバイクを活用して3本ローラーに乗り続けることで整う(コツの習得)が早いと感じています。(これは指導者としての経験です。)
ポジションなどが異なる場合
クリート位置が左右異なっていたり、シムを噛ませるなどして左右の高さが異なっているこがあります。意図的に何かを考えて調整する人はいますが、何も考えずにセットした中で異なっているという人もいます。その場合、まず左右対象にしましょう。
といいつつ、そうして左右対象にしたとしても左右差が出る場合があります。むしろそのケースが多いのですが、3つ上げた原因のその他2つの”どちらか”もしくは”その両方”が原因である方の方が多いので、結局別のアプローチをする必要があると考えられます。
ちなみに、個人的にはクリートの位置・無理やシムを利用するなどして左右差を調整するのは、骨または関節構造的に問題がある場合を除いて行わないようにしています。機能解剖的な問題であれば、各種運動やドリルで改善する、が一番かなと考えています。
>> インソールやシムを活用した方法
プロ選手の場合は、身体的な左右差を均等に戻そうとする方法ではなく、むしろ左右差をそのまま活かしてポジションを出すためにシムを活用したり、インソールを活用するケースがあります。
それが良いというわけではありませんが、限られた時間(選手生命)の中でパフォーマンスを出さなくてはいけない状態で戻してしまうことで、逆にパフォーマンスが低下したり、左右対象となった状態でのペダリングのコツを習得するまでに時間が必要となるため、仕方ないだろうと考えられることもあります。
膝の痛みについて (補足)
実際に走行中に膝が痛くなる(違和感がある)場合は、本記事だけでなく以下の記事も合わせてご確認ください。
⚫︎ 膝が痛くなる原因
: ポジションが合っていない
: クリート位置が適切でない
: 股関節でなく膝関節が主働
本記事のまとめ
左右のパワーバランスが均等であることに越したことはないが、左右均等だからといってパフォーマンス向上に関与しているかどうかは明確ではありません。
しかし、左右差が大きい場合は身体的な障害が発生し、パフォーマンスに影響を与えてしまうことも考えられるため、ある一定の許容範囲内(目安±2%以内)までに左右差を抑えると良いでしょう。そのためには、自身の左右差の原因が何かを理解し、適切なアプローチをする必要があると考えられます。
現在では、ペダリングやカラダの動きを可視化することができます。改善したい場合は、自身の動きを客観的に確認し、自身がどのパターンに分類されるか理解した上で、必要となるアプローチを行いましょう。
ただし、知識がないと改善することは難しいので、悩まれている場合は一度専門家に依頼し、確認してもらいましょう。
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