こんにちは。
名古屋のロードバイクスクール 「 ORCA CYCLING SCHOOL 」の伊藤です。
こちらの記事では、ロードバイクのトレーニングについて解説しています。
ペダリングをうまく行いたいです。
SFRについて教えてください。
以上のような、SFR に対する質問についてにお答えします。
⚫︎この記事の内容
: SFR とは
: SFR の効果とは
: SFR の意味とは
SFRとは
SFR ( Slow Frequency Revolutions ) は、自転車上の筋トレとして、パフォーマンス向上のための下半身の筋力強化としておこなわれていました。
さまざまな方法がありますが、主に登坂を活用し、シッティングでギリギリ40-60rpmで回すことができるギア比を選択して走行するという方法が、最も広く知られてるものだと思います。
日本では、パワートレーニングが浸透し始めた頃から広く認知され始めましたが、海外ではそれ以前より多くのプロサイクリストが実施していた伝統的なトレーニング方法の一つでもあります。
SFRの効果とは
いつからか、SFRは筋力向上やパワートレーニングに対してトレーニング効果がないのではと疑われ始め、今ではペダリング動作の改善を目的としたドリル ( Drill : 基本練習 ) として再定義され始めつつ、雑誌やメディアでも情報発信されるようになりました。
そんな時、実際にSFRには本当に運動生理学的な効果(筋力向上・持久力向上)がなかったのか?と疑問に思い調べていたところ、面白い論文を見つけたのでここで紹介したいと思います。
論文紹介
プロトコル
フィットネスレベルの異なる22名のサイクリスト被験者として参加。
⚫︎対象
: 22名の男性サイクリスト(ノルウェーの方)
※ノルウェーのグランフォンドであるBergen-Voss(165km/獲得標高2100m)を4時間30分以内に完走できた人を対象としています。
⚫︎ フィットネスデータ
:年齢 47±6歳
:体重 78±7kg
:Vo2max 57.9±3.7ml/kg/min
⚫︎ ワークアウト
15分間のW-UP後、以下のワークアウト
5set × ( 6min + 3min )
6min : HRmax 73-83%
3min : HRmax 60-72%
※ HRmax 73%-83%は Tempo領域の強度
を2つのグループ
・Low Cadence Group (LC)… 40rpm で実施
・freely chosen cadence group(FCC) … 自由に行う
に分けて、1セッションの後に48時間以上の間隔を開けて週2回、12週間も継続して実施します。
その結果
・Rump Up Test ( Vo2max / OBLA )
・30min TT ( Vo2max / Power )
・Leg strength ( Leg Press / Leg Extension )
がどう変化するのかを調査したものになります。
結果
この結果は、以下の通りになります。
⚫︎ Vo2max の変化
Vo2max … LC +1.4±2.4 / FCC 3.3±2.8 向上
※ FCC群は向上したと言える
⚫︎ OBLA(血中乳酸値4.0mmol/l)を基準にした変化
Vo2 … LC 1.5±2.8 / FCC 2.4±2.2 向上
PO … LC 10±16w / FCC 10±10w 向上
※ FCC 郡は向上したと言える
⚫︎ 30分間TTでの変化
Vo2 … LC -0.1±2.6 / FCC 1.9±2.2 向上
MPO … LC −3 ±18w / FCC 13±16w 向上
※ FCC郡は向上したと言える
⚫︎ 筋力の変化
レッグプレス / レッグプレス共に向上なし
以上の結果をまとめると、ある一定のフィットネスを有するサイクリストがSFRを中強度で行った場合、フィットネスには変化がないという可能性が判明しました。
論文のまとめ
この論文の面白いところは、当時のノルウェー人サイクリストたちの間でSFRが流行っていて、フィットネスを向上させるために一般的なトレーニング方法である信じて実施されていたので、有益であると仮定した中で実験した結果、なんと予想とは相反した結果になったというところです。真実とは残酷なものです。
特に自転車上での筋トレと言われていたにも関わらず、筋力向上という点でも効果なしという結果に終わってしまったのは残念なところです。巷でまことしやかに囁かれていたように「やっぱり効果がなかったじゃないか」と言われてもしかたがないかなと感じるところです。
SFR の意味とは
ところが、海外プロサイクリストのトレーニングでは今だにSFRを取り入れていますし、コンチネンタルチームやナショナルチームに所属する選手のワークアウトを教えてもらうSFRを導入する選手も多くいました。
そんなプロ選手の一人に、SFRを実施してもらいました。その際のペダリング(パワー)データを紹介いたします。
引き足が、踏み足のパワーを邪魔せずに丁寧に回せているのがわかるでしょうか。
このように、SFRは丁寧にペダリングをおこない、効率的にバイクを進めるための最適な動作であると考えられます。
SFRを取り入れるタイミングなどもカウンセリングしてみると、どうもW-UPの一環として実施し、感覚を整えてからワークアウトに移るようですが、確かにペダリングを整えてから走行することで、効率的かつ効果的なワークアウトを行えそうだと考えられます。
ペダリング効率を改善したいと考えたときは、是非とも取り入れてみましょう。
「より良いトレーニングがしたい…」と感じる方へ
SFRはフィットネスの向上としての意味は効果がないと考えられますが、動作習得のドリルとして導入することで、効率的なペダリングをおこなう感覚を手に入れることができると考えられます。
そのため、ロードバイクでのワークアウトを実施する前に、W-UPとして取り入れてからメインメニューを行うことをお勧めしています。
ただパワーを追うだけでなく、なぜその数字が出るのかをSFRを通して技術的側面から考えて実施してみましょう。
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この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。