こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。
おるか君SFRという練習をよく聞きますが、そもそも何のための練習なんですか?
やれば脚の筋力が上がるのか、ケイデンスや時間の目安も知りたいです。
結論から言うと、SFRは「筋力を大きく伸ばす練習」というより、「低いケイデンスでトルクをかけるペダリングの練習」として使うのがおすすめです。研究では、中程度の強度で行う低ケイデンス練習は、筋力や持久力を大きく伸ばさなかったと報告されています。筋力を上げたいならジムでの筋トレ、SFRはペダリング技術と登りの粘りのために、と役割を分けて考えるとムダがありません。
この記事では、SFRとは何か、研究から見た効果、ギア・ケイデンス・時間の目安、ローラーでのやり方、膝を守るための注意点、週のメニューへの組み込み方までを解説します。
SFRとは?ロードバイクの低ケイデンス・高トルク走
SFRは「Slow Frequency Revolutions」の略で、直訳すると「ゆっくりした回転」です。登り坂などでサドルに座ったまま(シッティング)、重めのギアを40〜60rpmくらいの低いケイデンスで回す練習を指します。
ケイデンスとは、1分間にクランクが何回転するかを表す数字です。ふだんの巡航では80〜95rpm前後で回す人が多いので、SFRはその半分近くまで回転を落とすことになります。
同じパワーを出すなら、回転を落とすほど1回転ごとにかかる力(トルク)は大きくなります。たとえば250Wを出すとき、90rpmではクランクにかかる平均トルクはおよそ27Nm、50rpmではおよそ48Nmになります(パワー=トルク×回転速度から計算した目安です)。SFRは、この「1回ごとに大きな力をかける状態」をあえて長く続ける練習です。
Whittyらの研究でも、ケイデンスが上がるほどクランクにかかるピークトルクと平均トルクは小さくなったと報告されています。同じ研究では、自転車競技の経験がない人が自然に選ぶケイデンスは約80rpmで、エネルギー効率が最も良い50rpmより高く、筋肉への負担感が小さくなる回転を選んでいることが示唆されています。SFRは、ふだんは避けている「筋肉にずっしりくる回転」をあえて使う練習といえます。
海外のプロが昔から取り入れてきた伝統的な練習
SFRは、ヨーロッパのプロ選手が昔から行ってきた伝統的なトレーニングとして知られています。冬から春のベース期に、長い登りで重いギアをじわじわ踏む姿は、ロードレースの練習の定番でした。
当時は「登りで脚の筋力をつける練習」と説明されることが多く、日本でも同じ意味で広まりました。
近年は「筋トレ」から「ペダリングドリル」へ
ところが近年は、SFRで本当に筋力が上がるのかが疑問視されるようになりました。後で紹介するように、低ケイデンス練習を続けても脚の筋力が増えなかったという研究があるためです。
そのため、SFRは「筋力トレーニング」ではなく、ペダルにトルクをかける感覚をつかむ「ペダリングドリル」として再定義されつつあります。踏み込みのタイミングや、上半身を固めずに力を伝えるフォームを、ゆっくりした回転の中で確認できるのが利点です。
SFRに効果はある?低ケイデンストレーニングの研究
ここからは、低ケイデンス練習の効果を調べた研究を紹介します。結果は研究によって少しずつ違うので、「どんな強度で、誰が、何をしたか」に注目して読んでください。
中強度の低ケイデンス練習は、筋力もパフォーマンスも伸ばさなかった
SFRに最も近い条件で行われたのが、Kristoffersenらの研究です。よくトレーニングされたベテランのサイクリスト22名(平均47歳)を2つのグループに分けました。
- 低ケイデンス群:40rpmで6分×5本のインターバルを、最大心拍数の73〜82%の中強度で週2回、12週間追加
- 自由ケイデンス群:同じくらいの強度で、自分の好きなケイデンスの練習を週90分追加
その結果、低ケイデンス群では有酸素能力、パフォーマンス、脚の筋力のいずれにも有意な変化がなかったと報告されています。一方で、自由ケイデンス群は最大酸素摂取量や、乳酸閾値でのパワー(284W→294W)、30分テストのパワー(284W→297W)が向上しました。
つまり、中強度で40rpmのSFRを追加するより、同じ時間をふだんのケイデンスで走ったほうが伸びたという結果です。旧来の「SFRで筋力アップ」という考え方には、少なくともこの条件では裏付けが得られなかったことになります。
高強度の低ケイデンス・インターバルでは効果が出た研究もある
一方で、低ケイデンス練習が有利だったという研究もあります。
Patonらは、ロードの選手18名に4週間で計8回、片脚ジャンプと高強度のスプリントを組み合わせた練習を行わせました。スプリントを60〜70rpmで行った群は、110〜120rpmで行った群より、60秒パワー、ピークパワー、乳酸4mmol時のパワーの伸びが大きかったと報告されています。ただし、これは爆発的なジャンプと全力に近いスプリントを含む練習で、一般的なSFRとはかなり中身が違います。
Whittyらは、持久系サイクリスト16名に6週間で18回のインターバル練習を行わせ、自分の好むケイデンスより20%低い群と20%高い群を比べました。どちらの群も15分タイムトライアルの成績が向上し、低ケイデンス群のほうが良い結果でした。ただし、クランクにかかるトルクのかけ方(トルクプロファイル)は、どちらの群でもほとんど変わらなかったとされています。
系統的レビューの結論は「強い根拠はまだない」
HansenとRønnestadは、低ケイデンス練習の研究7本をまとめた系統的レビューで、現時点では低ケイデンス練習の利点を示す強い根拠はないと結論づけています。そのうえで、中強度〜最大強度の低ケイデンス練習を「取り入れることを検討してもよい」と、控えめな推奨にとどめています。研究ごとに対象者や練習内容がかなり違うことも、慎重な結論の理由です。
| 研究 | 対象・内容 | 主な結果 |
|---|---|---|
| Kristoffersenら(2014) | ベテラン22名・40rpm・中強度・12週 | 筋力・パフォーマンスとも向上なし |
| Patonら(2009) | ロード選手18名・60〜70rpm・高強度スプリント+ジャンプ・4週 | 低ケイデンス群のほうが伸びが大きい |
| Whittyら(2016) | 16名・好みより20%低い回転・インターバル・6週 | 両群向上、低ケイデンス群が上回る |
| Hansen & Rønnestad(2017) | 7研究の系統的レビュー | 強い根拠はまだない |
研究から見たSFRの位置づけ
これらをまとめると、次のように整理できます。
- 中強度でゆっくり回すだけのSFRは、筋力や持久力を大きく伸ばす効果は期待しにくい
- 低ケイデンスでも強度が高い練習では、短時間のパフォーマンスが伸びたという報告がある
- ただし研究数は少なく、「SFRが絶対に効く/効かない」と言い切れる段階ではない
また、筋力そのものを高める方法としては、ジムでの高重量の筋力トレーニングのほうが根拠がそろっています。Rønnestadらのレビューでは、持久系トレーニングに高重量の筋トレを加えることで、サイクリングの経済性やパフォーマンスが向上するという研究が多いとまとめられています。筋トレの考え方は「サイクリスト・トライアスリートが筋トレをする理由」で詳しく解説しています。
そこでORCAでは、筋力はジム、SFRはペダリングの技術練習と登りの局所的な筋持久力づくり、という役割分担をおすすめしています。
SFRのやり方|ギア・ケイデンス・強度・時間の目安
ここからは実践編です。SFRは「重いギアで限界まで踏む練習」ではありません。きれいなフォームを保てる範囲で、低い回転を一定に保つことが大切です。
基本の設定
| 項目 | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 場所 | 斜度4〜7%程度の一定した登り、または固定ローラー | 信号や交差点のない安全なコースを選ぶ |
| ギア | ケイデンスが50rpm前後まで落ちる重さ | 最初は軽めにして60rpm付近から |
| ケイデンス | 40〜60rpm | 40rpm未満はフォームが崩れやすいので避ける |
| 強度 | FTPの70〜85%程度/きつさ10段階で5〜6 | 息が上がりきらない「テンポ走」くらい |
| 時間×本数 | 3〜6分×3〜5本 | 合計10〜25分が目安 |
| 回復 | 本数の間に3〜5分 | 軽いギアで90rpm前後をくるくる回す |
| 頻度 | 週1回(多くても2回) | 強度の高い練習の前日は避ける |
FTP(1時間程度維持できる最大パワーの目安)がわからない方は、まず「FTPとは?測り方」を参考に測定しておくと、強度を決めやすくなります。パワーメーターがない場合は、会話がぎりぎりできる程度のきつさを目安にしてください。
レベル別のSFRメニュー例
| レベル | メニュー | ケイデンス | 強度 |
|---|---|---|---|
| 初めての人 | 3分×3本(回復3分) | 55〜60rpm | FTPの70%前後 |
| 慣れてきた人 | 5分×4本(回復4分) | 50〜55rpm | FTPの75〜80% |
| レースを目指す人 | 6分×5本(回復4〜5分) | 45〜55rpm | FTPの80〜85% |
いきなり上のレベルから始める必要はありません。まずは初めての人のメニューを2〜3週間続け、膝や腰に違和感が出ないことを確認してから、時間や本数を少しずつ増やしましょう。
SFRで意識するフォームとペダリング
- 上半身はリラックス:ハンドルを強く引きつけず、肩と腕の力を抜く
- 骨盤を安定させる:サドルの上でお尻が左右に揺れないようにする
- 踏み込みは早めに:クランクが真上を過ぎたあたりから力をかけ始める
- 下死点で踏みすぎない:下まで押し込まず、次の脚へスムーズに切り替える
- 膝はまっすぐ:膝が内側や外側に流れていないか確認する
- 回転を一定に:ペダルが「カクカク」せず、なめらかに回る重さを選ぶ
SFRは回転がゆっくりなぶん、1回転の中の「どこで力が抜けているか」に気づきやすい練習です。慣れてきたら、同じ意識のまま通常のケイデンスに戻して走り、感覚の違いを確かめてみてください。
AFTER WORK CLASS
名古屋で、仕事帰りにコーチと一緒に練習しませんか
ORCA CYCLING SCHOOLの大人クラスでは、月曜は筋力トレーニング、火・水曜はローラー練習を1回90分で行っています(星が丘校・名古屋本校)。初心者から上級者まで、1回4,400円から参加できます。
大人クラスを見る →ローラー(インドア)でのSFRのやり方
SFRは、ローラー台でも行えます。屋外の登りがない地域の方や、信号で止まらずに一定の負荷をかけたい方には、むしろローラーのほうがやりやすいこともあります。
固定ローラー・スマートトレーナーがおすすめ
3本ローラーは負荷が軽く、低いケイデンスではバランスも取りにくいため、SFRには向きません。負荷を調整できる固定ローラーやスマートトレーナーを使いましょう。
| モード | やり方 | 注意点 |
|---|---|---|
| ERGモード(パワー固定) | 目標パワーを設定し、重いギアで回転を落とす | 回転を落とすほど抵抗が増えるので、急に回転を下げすぎない |
| 勾配(スロープ)モード | 勾配5〜7%程度に設定し、ギアで回転を調整 | 屋外の登りに近い感覚で行える |
| 負荷レベル固定 | 負荷を一定にして、ギアでケイデンス50rpm前後に | パワーが変動しやすいので、きつさで管理する |
スマートトレーナーを使ったメニューの組み方は「スマートトレーナーのワークアウトメニュー」でも紹介しています。室内では汗がこもるので、扇風機と給水を必ず用意してください。
ローラーSFRのメニュー例(約50分)
| 区間 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| ウォームアップ | 15分 | 軽いギアで90rpm前後、徐々に強度を上げる |
| SFR | 5分×4本 | 50〜55rpm・FTPの75〜80% |
| 回復 | 各4分 | 軽いギアで90rpm前後 |
| クールダウン | 10分 | ごく軽い負荷で回す |
SFRの注意点|膝への負担と痛みが出たとき
SFRは1回転ごとの力が大きくなるため、膝などの関節に負担がかかりやすい練習です。特に次の点に注意してください。
膝に痛みがある人はSFRを避ける
すでに膝に痛みや違和感がある方は、SFRは行わないでください。痛みを我慢して続けると、症状が悪化することがあります。痛みが続く場合は、自己判断せず整形外科などの医師に相談しましょう。登りでの膝痛については「ヒルクライムで膝が痛くなる原因」でも解説しています。
サドルの高さとギアの重さを見直す
Ericsonらの研究では、膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかる力は、負荷が大きいほど、またサドルが低いほど大きくなったと報告されています。SFRの前に、サドルが低すぎないかを確認しましょう。また、重すぎるギアで無理やり回すのも膝の負担を増やします。
そのほかの注意点
- ウォームアップを10〜15分以上しっかり行い、冷えた状態でいきなり始めない
- 寒い時期はレッグウォーマーなどで膝を冷やさない
- 途中で膝・腰に痛みが出たら、その日はすぐに中止する
- クリートの位置やポジションに不安がある人は、先にフィッティングで確認する
- 成長期のジュニア選手は、重いギアでの練習を控えめにする
SFRをトレーニングメニューに組み込む方法
SFRは「メインの練習」ではなく、ペダリングを整える補助的な練習として週1回程度入れるのがおすすめです。研究でも、中強度の低ケイデンス練習を追加するより、ふだんのケイデンスで走る時間を確保したほうが伸びたという結果がありました。SFRのために、持久走やインターバルの時間を削りすぎないようにしましょう。
週間メニューの例(社会人ライダー)
| 曜日 | 内容 | SFRの位置づけ |
|---|---|---|
| 月 | 休養 | - |
| 火 | ジムで筋トレ(スクワットなど) | 筋力づくりはこちらで |
| 水 | ローラー:SST(スイートスポット)20分×2本 | - |
| 木 | 軽めのローラー+SFR 5分×3〜4本 | ペダリングの技術練習として |
| 金 | 休養またはごく軽いリカバリー走 | - |
| 土 | ロングライド(登りを含む) | 登りの一部でSFRを数本入れてもよい |
| 日 | グループライドまたは持久走 | - |
スイートスポット練習のやり方は「スイートスポットトレーニング(SST)」、登りに強くなる練習全体は「ヒルクライムが速くなるトレーニング」で解説しています。
時期ごとの使い分け
| 時期 | SFRの使い方 |
|---|---|
| オフシーズン・ベース期 | 週1回、フォームづくりと登りの粘りのために取り入れる |
| レース前の強化期 | 高強度インターバルを優先し、SFRは減らすか短時間のドリルに |
| レース直前・テーパー期 | 基本的に行わない |
まとめ
- SFRは、シッティングのまま40〜60rpmの低いケイデンスで重めのギアを回す練習
- 中強度の低ケイデンス練習では、筋力やパフォーマンスは伸びなかったという研究がある
- 高強度の低ケイデンス・インターバルでは効果が出た研究もあるが、根拠はまだ強くない
- 筋力を上げたいならジムの筋トレ、SFRはペダリング技術と登りの粘りのために使う
- 目安は50rpm前後・FTPの70〜85%・3〜6分×3〜5本、週1回程度
- 膝に痛みがある人は行わず、痛みが続くときは医師に相談する
SFRは「やれば脚が強くなる魔法の練習」ではありませんが、目的をはっきりさせて使えば、ペダリングを見直すよい練習になります。自分に合ったギアや強度がわからない方、練習メニュー全体を組み立ててほしい方は、お気軽に公式LINEからご相談ください。
- Kristoffersen M, Gundersen H, Leirdal S, et al. Low cadence interval training at moderate intensity does not improve cycling performance in highly trained veteran cyclists. Front Physiol. 2014;5:34. doi:10.3389/fphys.2014.00034
- Hansen EA, Rønnestad BR. Effects of Cycling Training at Imposed Low Cadences: A Systematic Review. Int J Sports Physiol Perform. 2017;12(9):1127-1136. doi:10.1123/ijspp.2016-0574
- Paton CD, Hopkins WG, Cook C. Effects of low- vs. high-cadence interval training on cycling performance. J Strength Cond Res. 2009;23(6):1758-1763. doi:10.1519/JSC.0b013e3181b3f1d3
- Whitty AG, Murphy AJ, Coutts AJ, et al. The effect of low- vs high-cadence interval training on the freely chosen cadence and performance in endurance-trained cyclists. Appl Physiol Nutr Metab. 2016;41(6):666-673. doi:10.1139/apnm-2015-0562
- Whitty AG, Murphy AJ, Coutts AJ, et al. Factors associated with the selection of the freely chosen cadence in non-cyclists. Eur J Appl Physiol. 2009;106(5):705-712. doi:10.1007/s00421-009-1071-0
- Rønnestad BR, Mujika I. Optimizing strength training for running and cycling endurance performance: A review. Scand J Med Sci Sports. 2014;24(4):603-612. doi:10.1111/sms.12104
- Ericson MO, Nisell R. Patellofemoral joint forces during ergometric cycling. Phys Ther. 1987;67(9):1365-1369. doi:10.1093/ptj/67.9.1365








