こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。
おるか君SST(スイートスポットトレーニング)の内容や、やる頻度について教えてください。
SST(Sweet Spot Training:スイートスポットトレーニング)とは、FTPの88〜94%の強度で、20〜60分ほど走り続けるトレーニングです。「きつすぎず、楽すぎない」強度で、FTPと持久力を効率よく伸ばせると言われています。目安は週1〜2回、1回あたり合計30分以上です。
ただし、SSTだけを対象にした研究はまだほとんどありません。この記事では、SSTの強度と効果、レベル別のメニュー例、頻度とタイミング、やりすぎの注意点を、関連する論文とORCAの指導経験をもとに解説します。
SSTとは?強度とパワーゾーンでの位置づけ
SSTは、パワートレーニングで使われる強度とワークアウトの呼び名で、FTPの88〜94%の強度を指します。パワーゾーンでいうと、テンポ(ゾーン3)の上のほうから、閾値(ゾーン4)の下のほうにまたがる強度です。
| パワーゾーン | FTPに対する強度 | 感覚の目安 |
|---|---|---|
| ゾーン2(エンデュランス) | 56〜75% | 会話ができる |
| ゾーン3(テンポ) | 76〜90% | 少し息が上がる |
| SST(スイートスポット) | 88〜94% | 話すのはきついが、長く続けられる |
| ゾーン4(閾値) | 91〜105% | かなりきつい |
| ゾーン5(VO2max) | 106〜120% | 数分が限界 |
FTPが250Wの方なら、SSTは220〜235Wです。強度はFTPをもとに決まるので、FTPが正しく測れていることが前提になります。FTPの測り方はFTPとは?目安・測り方とTTEで解説しています。
SSTの効果|なぜ「スイートスポット」なのか
SSTの強度は、乳酸がたまり続けずに保てる上限(MLSS)やクリティカルパワー(CP)の、少し下にあたります。この上限を超えると、体の状態を一定に保てなくなり、急に疲れが進みます(Jones et al., 2019)。SSTはその手前で、体への刺激はしっかり大きく、それでいて長い時間続けられる強度です。
この強度で走り続けることで、次のような効果が期待できます。
- FTPの向上:閾値付近の強度に体が慣れ、上限が引き上がる
- FTPで走り続けられる時間(TTE)の向上:高い強度を長く保てるようになる
- 有酸素能力・持久力の向上:レースを走り切る土台ができる
こうした効果から、SSTはロードレースの基本的な持久力づくりから、タイムトライアルやヒルクライムで必要な「長い時間の上限パワー」を引き上げることまでに向いていると考えられます。
研究ではどう言われている?
SSTは多くのブログや動画で「時間効率がいい練習」として紹介されていますが、SSTそのものを対象にした研究はほとんどありません。近いものとして、閾値付近の強度を中心にした「閾値トレーニング」の研究があります。
- よく鍛えたサイクリストが6週間練習した研究では、低強度と高強度を組み合わせた「ポラライズド型」のほうが、閾値中心の練習よりもピークパワーや乳酸性作業閾値が大きく伸びた(Neal et al., 2013)
- 持久系の選手48人を比べた研究でも、閾値中心の練習を9週間続けたグループでは、パフォーマンスの指標にほとんど変化がなかった(Stöggl・Sperlich, 2014)
- メタ分析でも、タイムトライアルの記録はポラライズド型のほうが閾値型より伸びやすいという結果(Rosenblat et al., 2019)
一方で、トップレベルの持久系選手の多くは、低強度を中心に中くらいの強度(SST付近)もある程度取り入れた「ピラミッド型」の配分で練習していることが報告されています(Stöggl・Sperlich, 2015)。
つまり、SSTは効果的なワークアウトの1つですが、SSTだけで練習を組むのはおすすめできないということです。低い強度で量を積み、週に1〜2回SSTや高強度のインターバルを入れる、という組み合わせが大切です。練習時間が限られている社会人の方にとって、SSTは取り入れやすい選択肢の1つです。
SSTのメニュー例|レベル別のやり方
SSTは、FTPの88〜94%で1回10分以上続けるのが基本です。できれば合計30分以上、慣れてきたら45〜60分続けられることを目指しましょう。
基本:30分間続けて走る


ウォーミングアップのあと、FTPの88〜94%で30分間走り続けます。慣れてきたら45分、60分と少しずつ延ばしていきましょう。
慣れていない方:10〜15分に分けて走る


30分間一定の強度で走り続けるのが難しい方は、1本10〜15分に分け、あいだに5分ほどの休息を入れましょう。休息は長くなりすぎないようにし、SSTの合計時間が30分を超えるようにします。
物足りなくなってきたら:クリスクロス


SSTに慣れて物足りなくなってきたら、90秒のSST(FTPの85〜90%)と30秒の高強度(FTPの115〜125%)をくり返すクリスクロスを取り入れるのもおすすめです。レース中のペースの上げ下げにも強くなります。やり方はクリスクロスの実施方法で解説しています。
| レベル | メニュー例 | SSTの合計時間 |
|---|---|---|
| 始めたばかり | 12分 × 3本(休息5分) | 36分 |
| 慣れてきた | 20分 × 2本(休息5分) | 40分 |
| 中級 | 30分 × 2本(休息5〜10分) | 60分 |
| 上級 | 60分連続、またはクリスクロス | 60分 |
SSTの頻度とタイミング
SSTは週1〜2回を目安に取り入れましょう。1週間の中では、中くらいの強度のワークアウトを行う日に入れるのがおすすめです。高強度のインターバルの前日や、疲れが残っている日は避けましょう。


SSTは体への負荷も大きい練習です。たとえばFTPの90%で60分走ると、TSSは約81になります(TSS = 時間 × 強度係数² × 100)。1週間全体の負荷の目安はCTLを目安にした1週間のトレーニングメニューとTSSを目安にした1週間のトレーニングメニューを参考に、自分に合うタイミングを見つけてください。
SSTの注意点
- SSTばかりにしない:閾値付近の練習だけでは伸びが止まりやすい。低強度の量と高強度のインターバルも組み合わせる
- FTPを定期的に見直す:FTPがずれていると、SSTのつもりが楽すぎたり、きつすぎたりする
- 後半に強度を上げすぎない:94%を超えてくると、SSTではなく閾値走になり疲労が大きくなる
- 暑い日は強度を下げる:同じパワーでも心拍や体への負担が大きくなるので、感覚と心拍も見ながら調整する
AFTER WORK CLASS
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大人クラスを見る →閾値やVO2maxなど、ほかのインターバルの組み方はパワーメーターを使ったインターバルトレーニングでまとめています。
よくある質問
Q. SSTとは何ですか?
SST(Sweet Spot Training:スイートスポットトレーニング)とは、FTPの88〜94%の強度で、20〜60分ほど走り続けるトレーニングです。きつすぎず楽すぎない強度で、FTPと持久力を伸ばすことを目的にしています。
Q. SSTの強度はどのくらいですか?
FTPの88〜94%です。FTPが250Wなら220〜235Wが目安になります。パワーゾーンでは、テンポ(ゾーン3)の上のほうから閾値(ゾーン4)の下のほうにまたがる強度で、話すのはきついけれど長く続けられる感覚です。
Q. SSTは何分やればいいですか?
1回10分以上を基本に、合計30分以上を目指しましょう。慣れていない方は10〜15分を2〜3本に分けて、あいだに5分ほど休みます。慣れてきたら45〜60分続けられるようにしていきます。
Q. SSTは毎日やってもいいですか?
おすすめしません。SSTは体への負荷が大きく、閾値付近の練習ばかりでは伸びが止まりやすいことも分かっています。週1〜2回を目安にし、ほかの日は低い強度での量の練習や回復にあてましょう。
Q. SSTとゾーン2トレーニングの違いは?
ゾーン2はFTPの56〜75%で、会話ができる強度で長く走る練習です。SSTはFTPの88〜94%で、より強い刺激でFTPを引き上げる練習です。ゾーン2で土台を作り、週1〜2回SSTを入れるという組み合わせがおすすめです。
SSTをどの時期にどう組み込むかは、トレーニング計画の立て方(ピリオダイゼーション)を参考にしてください。
まとめ
- SSTはFTPの88〜94%:FTP250Wなら220〜235W
- 時間:1回10分以上、合計30分以上。慣れたら45〜60分
- 頻度:週1〜2回、中くらいの強度の日に入れる
- SSTだけにしない:低強度の量と高強度を組み合わせる
- 物足りなくなったら:クリスクロスで刺激を変える
SNSなどでは、SSTは「時間対効果が高い」と紹介されることが多いです。ですが、本当に時間対効果が高いのは、今の自分に必要なワークアウトです。この記事を参考に、必要だと感じたらSSTを取り入れてみてください。
- Jones AM, et al. The maximal metabolic steady state: redefining the gold standard. Physiol Rep. 2019;7(10):e14098. doi:10.14814/phy2.14098
- Neal CM, et al. Six weeks of a polarized training-intensity distribution leads to greater physiological and performance adaptations than a threshold model in trained cyclists. J Appl Physiol. 2013;114(4):461-71. doi:10.1152/japplphysiol.00652.2012
- Stöggl T, Sperlich B. Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training. Front Physiol. 2014;5:33. doi:10.3389/fphys.2014.00033
- Rosenblat MA, Perrotta AS, Vicenzino B. Polarized vs. Threshold Training Intensity Distribution on Endurance Sport Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Strength Cond Res. 2019;33(12):3491-3500. doi:10.1519/JSC.0000000000002618
- Stöggl TL, Sperlich B. The training intensity distribution among well-trained and elite endurance athletes. Front Physiol. 2015;6:295. doi:10.3389/fphys.2015.00295
- Allen H, Coggan A. Training and Racing with a Power Meter. VeloPress.






