こんにちは。
名古屋・岐阜羽島のロードバイクスクール「 ORCA CYCLING SCHOOL 」です。
おるか君レースシーズンが終わって、冬は何をすればいいのか迷っています。
寒いし休みたい気持ちもあるけど、来季は今年より速くなりたいです。
結論から言うと、ロードバイクのオフシーズンは「1〜3週間しっかり休む→低強度の量とSST・筋トレで土台をつくる基礎期に移る」という流れで過ごすのがおすすめです。休みすぎないこと、筋トレを週1〜2回入れること、冬のうちにポジションを見直すことの3つが、来季の伸びを左右します。
この記事では、オフシーズンの位置づけとピリオダイゼーションの考え方、脱トレーニングのリスク、社会人向けの冬の週間メニュー例、筋トレ・ローラー練習のポイント、フィッティングや体調管理までを研究も交えて解説します。
ロードバイクのオフシーズンとは?冬は「休養」と「基礎期」の2段階
オフシーズンと聞くと「何もしない期間」をイメージするかもしれません。しかし競技者にとっての冬は、心身を回復させる休養期と、来季に向けて土台をつくる基礎期の2つに分けて考えるのが一般的です。
ヒルクライムやロードレース、トライアスロンのシーズンは、春から秋にかけてレースが続きます。数か月間ずっと高い負荷をかけてきた体と心は、自分で思っている以上に疲れています。まずはそれをリセットし、そのうえで次のシーズンの準備に入る、という順番が大切です。
休養期(移行期):1〜3週間を目安に心と体をリセット
シーズン最後のレースが終わったら、1〜3週間ほどは自転車から少し離れても大丈夫です。この時期は「移行期」とも呼ばれます。
- 完全休養:数日〜1週間ほどは、乗らない日があってもOK
- アクティブレスト:散歩、軽いジョグ、水泳、のんびりポタリングなど、楽しめる運動を短時間
- 振り返り:今季のレース結果やパワーデータを見直し、来季の目標レースを決める
ここで大事なのは「疲れを抜くこと」と「来季へのモチベーションを取り戻すこと」です。練習をしない罪悪感は持たなくて大丈夫です。
基礎期:有酸素の土台と筋力をつくる期間
休養期のあとは、およそ12〜16週間の基礎期に入ります。基礎期のテーマは、長く走れる有酸素能力の底上げと筋力・体幹の強化です。レースのような激しい練習は少なめにし、低〜中強度の量と筋トレを中心に組み立てます。
ピリオダイゼーションで考える冬のトレーニング計画
ピリオダイゼーション(期分け)とは、1年を目的の違う期間に分けて、トレーニングの内容を計画的に変えていく考え方です。「いつも同じ練習」ではなく、時期ごとに狙いを変えることで、目標レースにピークを合わせやすくなります。
Issurin(2010)は、伝統的な期分けモデルの課題を整理したうえで、少数の能力に絞って集中的に鍛えるブロックを順番に並べる「ブロック・ピリオダイゼーション」という考え方を紹介しています。社会人の場合も、冬は「有酸素と筋力」、春は「レースに近い強度」と、テーマを絞ってブロックを組むと計画がシンプルになります。
たとえば5〜6月に目標レースがある場合、年間の流れは次のようなイメージです。
| 時期(例) | 期間 | 主な目的 | 主な練習内容 |
|---|---|---|---|
| 10〜11月 | 休養期(移行期) | 疲労回復・振り返り | 完全休養、アクティブレスト、目標設定 |
| 11〜2月 | 基礎期 | 有酸素の土台・筋力アップ | 低強度ロング、SST、筋トレ週1〜2回 |
| 2〜4月 | ビルド期 | レースに必要な強度を高める | VO2maxインターバル、閾値走、筋トレは維持 |
| 5月〜 | レース期 | ピーキング・調整 | レース、強度維持、疲労管理 |
目標レースの日付から逆算して、基礎期をどこから始めるかを決めるのがポイントです。トライアスロンなら、冬はバイクに加えてランやスイムの基礎づくりも並行して進めます。
オフシーズンに休みすぎると?脱トレーニングで落ちる体力
休養は大切ですが、長く休みすぎると「脱トレーニング(ディトレーニング)」が起こります。脱トレーニングとは、トレーニングで得た体の適応が、刺激が足りなくなることで失われていく現象です。
Mujika & Padilla(2000)のレビューでは、4週間未満の短期的なトレーニング不足でも、よく鍛えられたアスリートでは最大酸素摂取量(VO2max)や血液量が速やかに低下すると報告されています。一方で、筋力の低下は比較的限定的とされています。
また、持久系トレーニングを積んだ人がトレーニングを中止した経過を追ったCoyleら(1984)の研究では、VO2maxは最初の21日間で約7%低下し、56日後には元の値より約16%低いところで安定したと報告されています。ただし84日後でも、トレーニング経験のない人よりは高い値を保っていました。
つまり、持久力は筋力よりも落ちやすいということです。休養期は長くても3週間程度にとどめ、そのあとは少ない時間でも乗り続けることをおすすめします。
| 休み方 | 目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 完全休養 | 数日〜1週間 | 疲労回復には有効。長引かせない |
| アクティブレスト | 1〜3週間 | 楽しめる運動を短時間。心拍は低めに |
| 1か月以上ほぼ乗らない | おすすめしない | 持久力の低下が大きく、戻すのに時間がかかる |
冬のトレーニングの中心は「低強度の量」と「SST」
低強度トレーニングの割合が大切な理由
持久系競技では、トレーニング全体のうち低強度の割合をどうするかがよく話題になります。
Seiler & Kjerland(2006)は、ジュニアのクロスカントリースキー選手の練習を分析し、持久系セッションの約75%が低強度で、高強度が15〜20%程度という「ポラライズド(二極化)」の分布だったと報告しています。さらに、エリート持久系選手は乳酸閾値付近の強度での練習が意外なほど少ないと述べています。
また、Stöggl & Sperlich(2014)は、よく鍛えられた持久系アスリートを4つの練習方法に分けて9週間比較し、ポラライズドトレーニングのグループで最大酸素摂取量などの主要な指標が最も向上したと報告しています。
冬の基礎期は、まず楽に会話ができる程度の低強度を、練習全体の多くの割合にすることを意識しましょう。外を長く走れる週末は、ゆっくりペースでのロングライドが向いています。
社会人にはSSTが効率的
ただし、社会人は平日に長時間乗るのが難しいのが現実です。そこで役立つのが SST(スイートスポットトレーニング)です。SSTとは、FTP(1時間ほど維持できる最大のパワー)の88〜94%前後で、10〜20分程度を数本くり返す練習です。
短い時間でも一定の負荷をかけられるため、平日のローラー練習と相性が良い方法です。ただし、SSTばかりを毎日続けると疲労がたまり、低強度の割合が少なくなります。SSTは週1〜2回までとし、ほかの日は低強度でつなぐのがバランスの良い組み方です。SSTのやり方は「スイートスポットトレーニング(SST)とは」で詳しく解説しています。
自分のFTPがわからない場合は、基礎期のはじめに一度測っておくと、強度の設定が正確になります。測り方は「FTPとは?測り方と考え方」を参考にしてください。
| 強度 | FTP比(目安) | 感覚 | 冬の使い方 |
|---|---|---|---|
| 低強度(エンデュランス) | 56〜75% | 会話ができる | 練習の大部分。週末ロングや平日の軽めの日 |
| SST | 88〜94% | 話すのはきつい | 週1〜2回、10〜20分×2〜3本 |
| 高強度(VO2max) | 106〜120% | 数分が限界 | 冬は少なめ。ビルド期から増やす |
社会人向け|冬のトレーニング週間メニュー例
ここでは、平日は仕事があり、週末に時間が取れる社会人を想定した週間メニューの例を紹介します。週の練習時間はおよそ6〜9時間です。
| 曜日 | メニュー例 | 時間 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 月 | 休養 | — | 完全休養。ストレッチ程度 |
| 火 | ローラー:SST 15分×2本 | 60〜75分 | 前後にしっかりアップとダウン |
| 水 | 筋トレ(下半身・体幹) | 45〜60分 | スクワットなど重めの種目中心 |
| 木 | ローラー:低強度+高回転ドリル | 45〜60分 | ペダリングのスムーズさを意識 |
| 金 | 休養 or 軽い筋トレ(補強) | 0〜30分 | 疲労が強ければ休む |
| 土 | 外で低強度ロング(悪天候ならローラー90分) | 2.5〜4時間 | 補給と防寒をしっかり |
| 日 | ローラー or 外:SST 20分×2本+低強度 | 1.5〜2時間 | 筋トレ2回目を入れる週は短めに |
このメニューはあくまで一例です。仕事の忙しさや睡眠時間によって、無理のない範囲で調整してください。疲労が抜けない週は、SSTを低強度に置き換えるだけでも十分です。
ローラー練習を続けるコツ
冬は日が短く寒いため、平日はローラーが練習の中心になります。飽きずに続けるために、次の点を意識してみてください。
- 扇風機を使う:室内は風がないため体温が上がりやすく、パフォーマンスが落ちる
- メニューを事前に決める:「何分を何本」と決めてから乗ると集中しやすい
- 汗対策と水分補給:タオルやマットで自転車と床を守り、ボトルは多めに用意
- 3本ローラーも取り入れる:バランス感覚とペダリングのスムーズさを鍛えられる
3本ローラーの乗り方やコツは「3本ローラーの乗り方と練習方法」で解説しています。
オフシーズンこそ筋トレ|サイクリストが冬に筋トレをする理由と時期
筋トレでサイクリングのパフォーマンスが上がる
「自転車選手に筋トレは必要なの?」という質問をよくいただきます。研究では、持久トレーニングに重めの筋トレを組み合わせることで、パフォーマンスが向上したという報告があります。
Rønnestadら(2015)は、若いエリート自転車選手に25週間の重めの筋トレを持久トレーニングと併用させました。その結果、持久トレーニングだけのグループに比べて、最大有酸素パワーや40分間のオールアウト走の平均パワーがより大きく向上したと報告されています。一方で、VO2maxや自転車の経済性(効率)には変化が見られなかったとされています。
また、Rønnestadら(2010)では、トレーニングを積んだ自転車選手が準備期の12週間に週2回の筋トレを行い、そのあとレース期の13週間は週1回の維持トレーニングに切り替えました。その結果、準備期に得た筋肉の太さと筋力が保たれ、パフォーマンスもさらに向上したと報告されています。
この流れは、冬の基礎期に週2回の筋トレで筋力を高め、シーズンに入ったら週1回で維持するという実践にそのままつなげられます。サイクリストが筋トレをする理由は「サイクリスト・トライアスリートが筋トレをする理由」で詳しくまとめています。
冬の筋トレメニューと頻度の目安
| 時期 | 頻度 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| 基礎期の前半(4〜6週) | 週2回 | フォーム習得。中程度の重さで8〜12回×2〜3セット |
| 基礎期の後半 | 週2回 | 重めの重さで4〜6回×3〜4セット(スクワット、デッドリフトなど) |
| ビルド期・レース期 | 週1回 | 回数を減らして筋力を維持 |
筋トレとバイク練習を同じ日に行う場合や、どちらを先にするかなど、タイミングの考え方は「筋トレの頻度とタイミング」を参考にしてください。
スクワットやデッドリフトは、フォームが崩れたまま重さを増やすと腰や膝を痛める原因になります。不安な方は、最初のうちだけでも専門家に見てもらうと安心です。ORCAでは、ロードバイク・トライアスロン向けのパーソナルトレーニングで、競技に合わせた筋トレのフォームとメニューづくりをサポートしています。
冬はポジション(フィッティング)を見直すベストタイミング
オフシーズンは、ロードバイクのポジションを見直すのにも最適な時期です。理由は大きく3つあります。
- レースがないので慣れる時間を取れる:ポジションを変えると、体がなじむまで数週間かかることがある
- 筋トレで体の使い方が変わる:柔軟性や筋力が変われば、合うポジションも変わる
- 低強度の練習が多い:新しいポジションで長い時間乗りながら確かめられる
シーズン中に感じた腰や膝の痛み、手のしびれ、「パワーが出しにくい」といった悩みがある場合は、ポジションが原因のこともあります。シーズン中に大きくポジションを変えるのはリスクがありますが、冬なら落ち着いて調整できます。
フィッティングの基本は「ロードバイクのフィッティングとは」で解説しています。ORCAのバイクフィッティングでは、体の柔軟性や筋力のチェックも含めて、競技の目的に合わせたポジションを提案しています。
原因がポジションかどうか、自分では判断しにくい方へ
ORCAのバイクフィッティングでは、ペダリングの動きを見ながら、サドル・ハンドル・クリートをまとめて調整します。
名古屋のバイクフィッティングの詳細を見る →オフシーズンの体調管理と体重のコントロール
冬に体重が増えやすい理由と考え方
冬は練習量が減るうえ、年末年始のイベントも多く、体重が増えやすい時期です。ヒルクライムでは体重がタイムに直結するため、気になる方も多いでしょう。
とはいえ、冬に極端な食事制限をすると、筋トレの効果が出にくくなったり、疲労が抜けにくくなったりします。オフは体重を急に落とす時期ではなく、増やしすぎない時期と考えましょう。目安として、シーズン中のベスト体重から大きく離れないように、週に1回程度体重を記録しておくと管理しやすくなります。
- 主食は練習量に合わせて調整し、練習の少ない日は少し控えめに
- 筋トレをする日は、たんぱく質をしっかりとる
- お酒や間食は「ゼロ」ではなく「量と回数を決める」
風邪・寒さ対策と疲労のチェック
冬は気温が低く空気も乾燥するため、体調を崩しやすい季節です。外を走るときは、手足と首まわりの防寒を十分にし、汗冷えを防ぐウェアを選びましょう。
また、仕事の忙しい時期と練習が重なると、疲労が抜けにくくなります。朝の心拍数がいつもより高い、だるさが続く、睡眠の質が悪いといったサインがあれば、思い切って練習を休むことも大切です。練習量と疲労のバランスを数字で管理したい方は、CTLやTSSといった指標を使うのも一つの方法です。
オフシーズンのよくある失敗と対策
| よくある失敗 | 起こりやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
| 1か月以上ほとんど乗らない | 持久力が大きく落ち、春に戻すのが大変 | 休養は1〜3週間。その後は短時間でも継続 |
| 冬から高強度ばかり | 春先に疲れてピークが早く来る | 冬は低強度とSST中心。高強度はビルド期から |
| 筋トレを始めたが続かない | 効果が出る前にやめてしまう | 週1回でもよいので12週間は続ける |
| 急な減量 | 筋トレの効果が出にくい、体調を崩す | 体重は「増やしすぎない」意識で管理 |
| ポジションの悩みを放置 | 春からも痛みや違和感が続く | 冬のうちにフィッティングで見直す |
オフシーズンは、地味な練習が多く、成果が見えにくい時期です。しかし、この時期にどれだけ土台を作れたかが、春以降の伸びを大きく左右します。
まとめ
- オフシーズンは「休養期(1〜3週間)」と「基礎期(12〜16週間)」の2段階で考える
- 休みすぎると脱トレーニングで持久力が落ちやすい。短時間でも乗り続ける
- 冬は低強度の量を中心に、SSTは週1〜2回で効率よく負荷をかける
- 筋トレは基礎期に週2回、シーズン中は週1回で維持する
- レースのない冬は、ポジション(フィッティング)を見直す絶好のタイミング
- 体重は落とすより「増やしすぎない」。体調と疲労のサインも見逃さない
冬のトレーニングは、来季の結果をつくる大切な準備期間です。自分ひとりで計画を立てるのが難しい方や、仕事と両立できるメニューを知りたい方は、オンラインコーチングで一緒に年間計画を立てていきましょう。お問い合わせは公式LINEからお気軽にどうぞ。
- Issurin VB. New horizons for the methodology and physiology of training periodization. Sports Med. 2010;40(3):189-206. doi:10.2165/11319770-000000000-00000
- Mujika I, Padilla S. Detraining: loss of training-induced physiological and performance adaptations. Part I: short term insufficient training stimulus. Sports Med. 2000;30(2):79-87. doi:10.2165/00007256-200030020-00002
- Coyle EF, Martin WH, Sinacore DR, et al. Time course of loss of adaptations after stopping prolonged intense endurance training. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1984;57(6):1857-64. doi:10.1152/jappl.1984.57.6.1857
- Seiler KS, Kjerland GØ. Quantifying training intensity distribution in elite endurance athletes: is there evidence for an “optimal” distribution? Scand J Med Sci Sports. 2006;16(1):49-56. doi:10.1111/j.1600-0838.2004.00418.x
- Stöggl T, Sperlich B. Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training. Front Physiol. 2014;5:33. doi:10.3389/fphys.2014.00033
- Rønnestad BR, Hansen J, Hollan I, et al. Strength training improves performance and pedaling characteristics in elite cyclists. Scand J Med Sci Sports. 2015;25(1):e89-98. doi:10.1111/sms.12257
- Rønnestad BR, Hansen EA, Raastad T. In-season strength maintenance training increases well-trained cyclists’ performance. Eur J Appl Physiol. 2010;110(6):1269-82. doi:10.1007/s00421-010-1622-4








